自己破産で失敗しないための
チェックリスト129項目

「人生をやり直すために一から出直したいが、なにから始めたらいいかわからない。」

自己破産制度を利用するためには、やるべきことや検討しなければならないことが山ほどあります。

そもそも自己破産以外にも債務整理をする手段はいくつか存在します。かえってその他の手段を用いたほうが適切なこともあります。

したがって、自己破産制度自体の検討だけではなく、まずは他の債務整理の方法を知り、その上で「いったい自分はどの手段を選択するべきなのか」を検討する必要があるのです。

ですが、このページをご覧になっている方は、日々の債務の返済に追われ、頭の中が借金のことでいっぱいになっているはずです。
「なるようになれ!」と自暴自棄になってしまっている人もいることでしょう。自分の置かれている状況を十分に理解できていない人も多くいるはずです。

そのような時の助けとなるように、制度の選択の良し悪しから、具体的に気をつけなければならない細かいところまで、一般的な注意事項のリストをつくりました。

これをチェックすることで、自分の状況を客観的にみて債務整理における適切な判断ができるようになるはずです。

自己破産制度を利用する際、必ずしも専門家の助力を得る必要はなく、自分で手続きを進めていくことも可能です。
ですが、そのための事務処理はとても煩雑であり、またのちのチェック項目でも触れますが、「免責」と呼ばれる決定がもらえなかった場合、さまざまな不利益が及ぶことになります。
さらに弁護士が行うと自己破産において簡易的な手続きが利用できるためかえって費用が安くなる可能性もあります。
ほかに自力で手続きをすると、家族や勤め先などに知られてしまう可能性が高くなります。

以上のことから、債務整理を検討する際はできるだけ早く専門家である弁護士に相談することがとても大切です。

このチェックリストは専門の弁護士による監修のもと作成されているため、弁護士に相談する場合でも、前もって本チェックリストを確認しておけば、スムーズに手続きが進められるはずです。

ご自分で手続きを進めようとお考えの方も、そうでない方もこのチェックリストをご活用ください。

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検討すべき事項をまとめているので、これだけ確認すれば基本はオーケー!
失敗しないための確認事項

利用方法

  1. 「詳しい解説」をクリックすることで詳細な解説を見ることができます。
  2. 項目を確認して問題がなければ、「チェックする」ボタンをクリックします。
  3. 必ずしもすべての項目を確認する必要はありません。自分の状況を把握したり、弁護士に相談したりする際などに参考として使用してください。

※ここでは主に東京地方裁判所での手続きをモデルケースとして解説しています。裁判所によって取り扱いが異なることがありますので詳しくは弁護士にご相談ください。

1.債務が支払えなくなったときにチェックする

基本的な知識

借金をして困ったらこの制度を利用すればいいと安易に考える人もいるようです。
しかし、だれでもいつでもできるというわけではなく、満たさなければならない要件があります。

知識
1制度の基本を理解しているか?

破産とは、完済することができない場合に、その人の持っている財産を公平に分ける手続きのこと。

  • 免責されると借金などがなくなります。
  • 財産の精算とともに、苦しんでいる人を借金などから解放し、生活の立て直しを図るための制度です。
  • 基本的な手続きの流れとしては、「申立て」により「開始決定」がなされます。その後、必要に応じて「財産を調べる」、「売却でお金にかえる」、「権利者等を調べる」、「分配する」、「免責」などが行われます。事務処理に必要な財産がない場合には、調査などは原則として実施されません。
▼ 詳しい解説
知識
2不利益が生じることを理解しているか?

財産を失うだけではなく、一定期間借り入れができなくなるなどの不利益が生じます。

  • 借り入れの制限は法的なものではなく、金融機関による事実上の制限です。借りたものを返せなかったわけですから、通常は借りることができなくなります。金融機関は情報を共有しているため、債務を負っていなかった金融機関からの借り入れもできません。ただし、データベースに記録される期間は5年から10年程度とされているため、その期間を経過すれば借り入れが可能になります。
  • 特定の職業や立場につけなくなる不利益もあります。こちらは法的な制約ですが、解消可能です。
  • 本籍地の市町村に備え付けられている破産者名簿に登載されることがあります。これは一般の人が閲覧することはできませんが、一定の職業につく場合に公的な身分証明書を求められることがあり、この身分証明書の作成時に破産者に該当するかが記載されます。
  • 不利益の詳細については個別の項目を参照してください。
▼ 詳しい解説
知識
3免責の基本を理解しているか?

破産そのものとは別の問題であり、借金をきれいにするために別途必要です。
これによってはじめて債務がなくなり、法的な制限から解放されます。

  • 必ず認められるわけではなく、一定の事実があると判断されると否定されることがあります。
  • 一定の事実に該当しても裁判官の裁量によって認める「裁量免責」が与えられることがあります。不許可事由に該当しても実際にはこれによって免責が認められることが多いといえます。反省していることがわかれば通常は認められています。裁判所の呼び出しに応じないなど不誠実な対応をしないように注意が必要です。
  • 不許可事由については個別の項目を参照してください。
▼ 詳しい解説
要件
4現在自分は支払不能といえるか?

この制度の対象者として認められるためには、支払不能の状態になければなりません。
今現在の収入状況や、既存の財産では返済がとても難しいことが必要です。

  • 3年以内に返済できるかが目安となります。このとき、将来の利息は考慮せずに計算します(交渉によって利息分を免除してもらうことも可能だからです。)。具体的には、債務の合計額を36か月で割ることで一月分の返済額を算定し、月々の返済できる額を超えているかを見ていくことになります。
▼ 詳しい解説

手続きの種類

自己破産制度の内容は簡単ではありません。処理の仕方が内部で分かれているのです。
また、債務整理の手段は一つではありません。

種類
5同時廃止について理解しているか?

処理の仕方は、「管財型」と「同時廃止型」に大きくわかれます。
破産管財人による財産の精算手続きが行われるものが前者にあたり、このような方法がとられないものが後者にあたります。

  • 本来この制度は対象者の財産を精算し、平等に権利者に分配するためのものです。そのため、原則として分配の責任者を選任し、その人に各種の調査や物の売却、配当などを実施してもらうべきです。ですが、めぼしい財産がないような場合には、費用もまかなえませんから、上記の処理ができません。したがって、このような場合は自己破産の開始と同時に手続きを終了させます。これを指して「同時廃止」と呼びます。
  • 実際には金目のものが見当たらないときでも、隠匿の疑いやなんらかの不正があるなど、詳しく調べる必要があると判断されるときは、原則的な手続きが行われます。
  • 費用や事務処理の簡易さに大きな違いがあるので注意が必要です。たとえば、費用についていえば、破産管財人がついている場合、その人に報酬を支払わなければなりません。この費用がそれなりにかかるのです。
  • 費用をまかなえるか否かについての目安は、一般的に20万円程度といえます。

【破産管財人とは】

  • 対象者の資産を権利者に公平に分配する任務を与えられた人です。
  • 裁判所より弁護士の中から選任されます。
  • 任務の内容は、対象者の資産を精査して、お金にかえられそうなものを見つけ、これを売ってお金にします。また、権利者とされている人が本当に権利を持っているかどうかや、その人の実際の債権額を調べて、問題なければ分配します。
▼ 詳しい解説
種類
6少額管財は、本来の事務処理が簡素化され処理する内容が少ないため費用と要する期間も少なくて済むことについて理解しているか?

  • 本人ではなく弁護士に任せることが要件となっています。
  • 本来のやり方では少なくとも50万円以上の予納金が必要となりますが、この場合には概ね20万円程度から認められています。
  • 権利者が多かったり時間がかかったりする場合(3か月を超えそうなとき)など、複雑なケースでは認められないことがあります。
  • 自由財産を拡張してもらいたい場合など、管財人による具申が必要となるケースでは、同時廃止よりも有利となることがあります。
▼ 詳しい解説
種類
7同時廃止になるとは限らないことを理解しているか?

必要な事務処理をしていくのに必要なお金やその他の財産がない場合には、原則として同時廃止となります。ですが、資産の状況や債務の内容などに関して詳しく調べる必要があると判断されたときは、原則どおりの処理が行われます。

  • 基本的に財産が20万円あるか否かで決まります。ただし、裁判所によって算定のしかたや金額自体が異なることがあるので注意が必要です。
  • 財産を隠していたり、安く処分したり、一部の人に対してのみ弁済したような事実があるなど、詳しい状況を調べる必要があるときは、管財型として処理されます。
  • 主な債務の理由がギャンブルなど、免責が認められないものに該当するときもいろいろ調べなければなりませんから同様です。
  • 事務処理や金銭的な負担が軽くなることから、対象者の多くは同時廃止を望む傾向にあります(同時廃止の場合における裁判所に対する費用は1万円から1万5,000円程度と少額で済む特徴があります。※このほかに郵便切手代などがかかります。)。
  • 申し立てを行う側が処理の方法を選択できるわけではありません。弁護士が代理する場合には、どちらを望むか希望を出すことはできますが、あくまでも参考意見にとどまり必ず採用されるわけではありません。
  • 個別の実質的な事情により管財型となることもあります。
  • 廃止決定後に管財型に変更となることはありません。
▼ 詳しい解説
種類
8費用をまかなえるか判断する具体的な方法を理解しているか?

個別の財産が一定の金額を超えるかを基準とする裁判所が多いといえます。個別ではなくすべての資産を合わせたものが一定の金額を超えているかを判断するところや、両者を併用しているところもあります。

  • 個別の財産としては20万円を採用するところが多いといえます。たとえば、預金や自動車、貴金属、株式、債券といった個別の物が、それぞれ20万円以下に収まっていれば、全体で超えていても同時廃止となります。この場合、総額で判断する取り扱いをするところや併用するところでは注意が必要です。
  • 現金の取り扱いについては裁判所によって異なるため注意が必要です。99万円以下の現金は自由財産のため、20万円基準をあてはめるべきか見解が異なるのです。さらに、現金についてのみ50万円など基準金額を変えたり、預金と合算して判断する取り扱いをしたりするところもあります。詳しくは弁護士に相談してください。
▼ 詳しい解説
他の手段
9自己破産以外の手段として、任意整理や特定調停、民事再生があることを知っているか?

  • この3つの方法に共通した特徴としては、返済総額を減らしつつ、所有する住宅を手元においておくことができることが挙げられます。また、特定の職業につけないなどの制限も生じません。借金がゼロになるわけではないことも共通しています。
  • 前二者ついては話し合いで解決を行っていくという共通点が、後二者については裁判所を利用して解決を行っていくという共通点があります。
  • いわゆるブラックリストに登録され、カードの作成や新たな借り入れが一定期間制限されるというデメリットがあることは同じです。
▼ 詳しい解説
他の手段
10任意整理について検討したか?

弁護士などの専門家に頼み、話し合いで将来の利息を免除してもらったり、数年に分けて借金を返す新たな契約を結んだりすることをいいます。基本的に借金がゼロになるものではありません。

●メリット

  • 専門家が間に入るので、取り立てを止めることができます。
  • 弁護士などが交渉しているため取引履歴の開示請求が通りやすくなります。これをもとに利息制限法を使って利息を計算し直し、多く支払っていた場合には元本が減少したり、過払い金が生じたりすることもあります。特に金利が高い業者からの借り入れが多いほど効果が高いといえます。
  • 計算した内容に基づいて、返済総額、期間、各月ごとの弁済額について和解交渉を行い、合意すればその内容に法的な拘束力がお互いに生じるため、約束された方法で返していけばよくなります。
  • 裁判所を利用しないため、一般の人にとって最も負担が小さい手段と考えられます。他の手続きでは裁判所に出頭しなければならないことがあります。
  • 一部の債務のみを対象とすることが可能です。たとえば、住宅ローンや担保がついているものを除外して交渉するようなこともできます。
  • 財産の精算手続きではないため、家や自動車などの高額な財物を手元に残したい場合にも有効です。
  • どうにもならないほど額が多い場合には、利用が難しいといえます。一般的には3年から5年以内で返せる場合に利用されます。

●デメリット

  • 任意の交渉のため、相手方が応じないことがあります。また、強制執行や担保競売手続を止めることはできません。
▼ 詳しい解説
他の手段
11特定調停について検討したか?

裁判所を通じた交渉により、将来の利息を免除してもらったり、数年に分けて借金を返す新たな契約を結んだりするものをいいます。基本的に借金がゼロになるものではありません。

●メリット

  • 間に裁判所が入っている点で他の手段と異なります。裁判とは異なり非公開ですので、秘密が守られます。
  • 利息を法律の範囲内で計算し直し、多めに支払っていた場合には元本が減少することもあります。
  • 調停が成立すれば、その内容に従って返済していくことになります。
  • 一部の債務のみを交渉することができます。たとえば、自動車ローンのみを外して交渉することも可能です。
  • 高額な物など処分されたくないものがあるときにも有効な方法です。
  • 通常、3年から5年以内に返済可能なときに活用されます。
  • 強制執行や担保競売が進行中の場合、これを止めてもらえることがあります。しかも、資力がないことが普通であるため無担保でも認めてもらえることがあります。

●デメリット

  • 裁判所にたびたび出頭しなければなりません。
  • 権利者を示した表や資産状況の明細書の提出などが求められます。これを自分で用意しなければなりません。
  • 過払い金の請求は別途行わなければなりません。
  • 調停調書は判決と同様の効力をもつ債務名義となります。そのため、権利者は別途裁判を起こさなくても強制執行可能となりますので注意が必要です。
  • 話し合いは市民から選ばれた調停委員のあっせんによって行われます。なるべく専門家が選ばれることになっていますが、必ずそうなるとは限りません。そのため任意整理と比べて不利な内容であっせんされることがあります。
  • 専門家ではない一般の方が交渉していくことはハードルが高いといえます。
  • 特定調停の成立率は高いとはいえません平成30年度調停既済事件数(司法統計)(PDF))。多くが取り下げや調停に代わる決定で決着がついています。当該決定は異議申し立てにより無効にできるため実効性に問題があります。
▼ 詳しい解説
他の手段
12民事再生について検討したか?

一定の金額まで債務の額を圧縮し、裁判所によって認められた再生計画に従う制度です。すべての債権者が承認しなくとも認められます。

●メリット

  • 利息だけではなく、元本自体を直接圧縮できます。債務の総額によって圧縮できる程度は異なりますが、5分の1から10分の1程度まで圧縮されることもあります。
  • 住宅ローン(リフォーム代金含む。)を除いた債務の合計が5,000万円以下でなければなりません。
  • 住宅ローンのみを残して、ほかの債務だけを圧縮できることが大きな特徴といえます。これによってマイホームを守りながら返済額を減らすことが可能となります。自動車など他のローンを除外することはできないので注意が必要です。
  • 返済期間は基本的に3年です。住宅ローンについては期間を最大で10年間伸ばすことが可能です(もとの契約の最後の返済期日から起算します。)。ただし、年齢が70歳まででなければなりません。
  • 住宅ローンの特則が適用される場合に、当該ローンに関する抵当権が実行されているときは、それを中止してもらうことができます。
  • 当該特則の適用は、保証会社による代位弁済から6か月以内でなければなりません。

●デメリット

  • 他の手段と比べて複雑な処理が必要であり、そのため期間も長くなります。
▼ 詳しい解説
期間
13手続に数か月かかることを理解しているか?

裁判所での手続きには、免責決定まで、同時廃止によるときでも3か月程度はかかります。少額管財では6か月を超えることもあります。

  • その他に弁護士などに任せてから申し立てまでに準備が必要ですから、その期間も通常は数か月かかります。
  • 取り立て自体は受任通知の送付により直ちにストップできます。
▼ 詳しい解説

専門家への依頼

裁判所を利用する場合、専門的な内容が多いため弁護士に依頼することが無難といえます。
費用を心配される方も多いですが、それほど大きな差はありません。

専門家
14弁護士に依頼することを検討したか?

弁護士に依頼することで迅速に処理してもらえ、免責を得られる可能性も高まります。

  • 専門的な制度であるため間違いなく免責を得られるようにするためには、専門家に依頼することが重要です。万が一、破産はしたけれど免責は受けられなかったということになれば、間違いなく後悔することになります。特に裁量免責を視野にいれると、本人による手続きは避けるべきです。
  • 専門家に依頼しても数か月はかかるため、その処理を素人が行うと時間がどれだけかかるかわかりません。見通しがつかなくなるのです。書類を作るだけでも大変な作業量があります。
▼ 詳しい解説
専門家
15本人申し立てのほうが金銭的負担が大きくなりうることを知っているか?

弁護士でなければ利用できない制度もあるため、依頼したほうがかえって費用や時間が節約できることがあります。

  • 自分ですべて行おうと考えている方の多くは、費用が安く抑えられると考えてのことかと思います。ですが、近年多く利用されている少額管財は弁護士がつくことを要件としているため、かえって高くなることがあります。通常の処理となった場合、少なくとも50万円以上の予納金が必要となるからです。
  • 弁護士費用は自由化されているためまちまちですが、おおむね20万円から50万円程度としているところが多いといえます。
  • 期間についても即日面接制度の利用により数週間から1か月程度短くできます。この制度は弁護士がいないと利用できません。※一部裁判所のみ
  • このように、現在では本人による手続きはメリットがあまりなく、むしろ弊害のほうが大きいとされています。裁判所の運用をみても弁護士が選任されることを事実上奨励しているといえます。
▼ 詳しい解説
悩み
16債権者からの取り立てに困っている場合、弁護士に依頼すれば取り立てがすぐにストップできることを知っているか?

  • 弁護士が各権利者に連絡することで取り立てが止まります。
  • 本人が手続きをとろうとしても、その間相手は待ってはくれません。取り立てに追われる状況が続くことになり心理的な負担が大きくなります。
▼ 詳しい解説
悩み
17法テラスという公的な制度を使ってことを知っているか?

  • 必要な費用を立て替えてくれます。無料の法律相談も行っています。
  • 対象となるのは弁護士費用なので裁判所への予納金は生活保護を受けている場合を除いて借りることはできません。
  • あくまで立て替えてくれるだけですので返済しなければなりませんが、利息がありませんし、原則3年以内に返済可能な範囲での分割払いができますから経済的負担が少ないのが特徴です。
▼ 詳しい解説

債務の状況について

債務の額や内容など、自分の債務状況を知らなければ対策を立てることはできません。
まずは、自分の置かれている状況を客観的に把握することが大切です。

債務
18債務の残高と債権者を把握しているか?

自分にいま負債がどの程度あるのか把握していなければ、支払不能か否かの判別も困難です。
また、債権者を把握していない限り、裁判所に提出する必要のある書類を作成することもできません。

  • 総額を把握するためには、一つ一つの会社ごとにていねいに計算していくことが必要です。
  • 請求書などが見つからなくても、業者に対する借金を把握することは可能です。銀行などの金融機関、クレジットカード会社、消費者金融からの借り入れについては、信用情報を扱う会社を使って調べることができます。
  • 信用情報機関におけるデータには保存期間があります(クレジット情報については完済から5年)。期間を経過した過去の借り入れ状況について調査する場合には、それぞれの業者に対して取引履歴を開示するよう求めていくことで行います。この際、弁護士でなければ素直に開示してもらえないことがあるので注意が必要です。

【信用情報機関とは】
会員企業(金融機関、クレジットカード会社、消費者金融など)から提供されるデータを統括的に管理、開示する業務を担う会社です。信用情報を共有することで消費者の信用力を迅速かつ的確に把握でき、消費者にとっては適切な信用の供与を受けることが可能となり、企業にとっては過剰融資を防ぐことが可能となっています。
この信用情報の一部として、借入状況が記録されているのです。
現在3社が存在しています。
主に、CIC社は消費者金融系、カード系、信販系、KSC社は金融機関、JICC社は消費者金融系と信販系の企業が加盟しています。
JICCに加盟している会社はCICに加盟していることも多いため、CICとKSCの2つに開示請求すれば業者からの借入状況の多くは把握できるといえます。ただし念の為、目当ての業者が当該機関に加盟しているかを各機関のホームページから検索してください。
借入先が多く、どこから借りているのかわからないような場合には、3社すべてに請求するほうが安全です。

▼ 詳しい解説
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免責について

破産手続きによって債務が必ずなくなるとはいえません。破産とは別に「免責」されなければならないのです。また、免責が認められたとしても、一部の債務については免責の対象外となることもあります。

不許可
19免責の不許可事由を理解しているか?

法律上、条文に列挙された一定の事実にあたらない限り、免責されることになっています。裏を返せば、列挙されたケースにあたると免責されないことがあります。

  • 具体的には、財産を目減りさせること、闇金からの借り入れやクレジットカードによる現金化、一部の権利者のみを優遇する行為、ギャンブルや浪費、返済能力がないのにあるかのように偽ってカードで買物をしたりお金を借りたりすること、帳簿の改ざん、うその債権者リストの提出、裁判所や管財人の職務の妨害、過去に受けた免責等の日から一定期間がすぎていないこと、破産法に定められた義務に違反することなどがあげられます。詳しくは個別の項目を参照してください。
  • これらの事実に該当しても、個別の状況により免責されることがあります(裁量免責)。
▼ 詳しい解説
不許可
20財産を隠したり処分したりしたか?

配当にあてられる可能性のある財産を、見つからないように隠したり、破壊したり、債権者に不利な形で処分するなど、不正に減らしてはいけません。これらの行為をすると破産手続き不許可の対象となります。ただし、不許可の対象となる要件として、債権者を害してやろうという意図が必要とされています。

  • 本来債権者に分配されるはずの財産がなくなってしまえば、破産手続きの意義が損なわれてしまうからです。
  • 誤って壊した、あるいは適正な価格で売却したと思っていたなど、債権者に不利益が及ぶと想定していなかったようなときは不許可の対象には該当しません。
  • 詐欺破産罪に問われることもあります。この場合、一旦なされた免責が取り消されることがあります。
  • 財産をとられるのが嫌で、隠したり処分したりしたくなるかもしれませんが、このような不正行為には非常に大きなペナルティーが課されることになります。代償はあまりにも大きいことを認識しておく必要があります。

【破産財団とは】
管財人が専属的に管理、処分する権限を有する破産者の財産の集合体をいいます。

【債権者を害する意図とは】
当該行為によって財産が減り、配当金額が小さくなることを認識しているだけでは足りません。さらに、配当を減らしてしまおうという害意が必要とされています。
しかし実際には、主観的な問題は判断が難しいため、そのような意図がないにも関わらず、あると判断されてしまうおそれがあります。そのため、財産の処分には細心の注意をはらい、よくわからない場合には弁護士に相談するようにしましょう。

▼ 詳しい解説
不許可
21違法な高金利の借り入れがあるか?(ヤミ金からの借り入れ)

著しく不利な内容で借金をすることは免責の不許可事由にあたります。ただし、破産を先延ばしにするためになされたという意図が必要です。

  • 典型的な例は、ヤミ金から利息制限法や出資法の上限をオーバーする利息で借金するケースです。

【破産を先延ばしにするため】
すでに支払不能でどうにもならないにもかかわらず、少しでも手続きを先延ばしにしようという意図が必要です。
このような意図が実際にはなかったとしても、外形的に支払不能の状態で違法な高金利で借り入れれば、要件を満たすと判断されるおそれがあります。
したがって、違法な高金利の業者から借り入れるようなことはしないように気をつける必要があります。

▼ 詳しい解説
不許可
22クレジットカードを利用して現金化していないか?

信用取引で商品を仕入れて当該商品を著しく不利な契約で処分することは免責の不許可事由にあたります。ただし、破産を先延ばしにするためになされたことが必要です。

  • 典型的な例は、クレジットカードを利用して新幹線などの回数券、商品券、高級な時計やバッグなどのブランド品など、換金しやすい物品を購入し、チケットショップや質屋にすぐに売却して現金にする手法です。このような行為は利用規約に違反しているため、資格を停止されるなどの不利益を被ることがあります。
  • 弁済する意思がない状態でこのような行為をした場合、詐欺罪に問われることもあります。
▼ 詳しい解説
不許可
23一部の債権者のみを優遇する行為が問題となりうることを理解しているか?

義務がないにもかかわらず、一部の権利者に対してのみ、支払いをしたり担保を立てたりすると免責が否定されます。ただし、その人に特段の利益をもたらすためであったり、他の債権者を害するために行われたりした場合に限ります。

  • 期限の到来前に弁済することも該当します。
  • 典型的な例は、お世話になっていた人には迷惑をかけたくないということで、ほかの権利者には秘密にして期日前に弁済することがあげられます。
  • 弁済だけではなく、抵当権などの担保を設定することも特別扱いすることになりますから注意が必要です。
  • 家賃や光熱費、携帯電話の通話料を毎月支払う分については問題ありません。日常生活をおくる上で不可欠だからです。ただし、ある程度滞納している場合には問題となりえますので弁護士に相談することが重要です。他の項目も参照してください。
  • 免責された後であれば、任意に支払うことは可能です。
▼ 詳しい解説
不許可
24ギャンブルや投資、浪費による借金があるか?

ギャンブルや、株式、先物取引、FX(外国為替証拠金取引)などにより、多額の借金を作ってしまった場合や、収入にふさわしくない派手な生活(ホストクラブや風俗通い、ブランド品などの高級な物品の購入等)により多額の借金を作った場合、また著しく財産を減らした場合には、免責が否定されます。

  • ギャンブルなどをしたからといって直ちに該当するわけではありません。それによって多額の借金を作ったり、著しく財産を減らしたりすることが必要です。
  • ギャンブルで生じた借金は免責されないと思いこんでいる方が多いですが、借金を抱えてしまう方の多くがこの要件に該当します。もしも、このようなケースで免責を認めなければ制度の存在意義が半減してしまいます。そのため、実際には裁量免責という仕組みを使って免責されることが多いといえます。最終的に否定されてしまうケースというのは悪質さが際立っているような例外的な場合といえます。弁護士のアドバイスに従って素直に関係者に協力していく姿勢を見せれば普通は問題となりません。
▼ 詳しい解説
不許可
25クレジットカードを利用する際や借金をする際に、嘘をついたことがないか?

支払不能の状態を認識しながら、そうでないと信じさせるために、だまして信用取引で財産を得たときは免責が否定されます。ただし、申し立て日の1年前から手続開始決定の日までに行われたものが対象です。

  • 詐欺にもあたりうる悪質な内容であり、債務者保護の必要性が乏しいからです。
  • 典型例は、お金を借りたり (カードキャッシング)、カードでショッピングをしたりする場合です。
  • だましたと認定されるには、積極的に嘘を言うなどの言動が必要であり、聞かれなかったから何も言わなかったというだけでは該当しません。
  • 対象となる期間に幅がありますが、実際上は直近の契約が重視されやすいといえます。状況が悪化していることが多く、要件を満たしやすいからです。
▼ 詳しい解説
不許可
26帳簿などの書類を隠したり偽造したりしていないか?

個人事業主であれば各種の帳簿類を作成していることが多いと思います。これらの書類が隠されたり、偽造されたり、改ざんが加えられたりすると負債の状況や保有している財産の状況がわからなくなります。こういった行為を防ぐためにこちらについても免責の不許可事由とされています。

  • 決算書、出納帳など業務や財産の状況に関するもの全般が対象となります。
  • 帳簿を作成していなかったり、一部の記録をつけ忘れたりしたような場合には該当しません。関係者を欺いて迷惑をかけたり、不正な利益を得たりすることを防ぐためのルールですから、うっかりミスについてまで厳しいペナルティーを与える必要はないからです。
▼ 詳しい解説
不許可
27嘘の債権者リストを提出した場合のリスクを理解しているか?

免責の手続きをする際には、債権者のリストを提出する必要があります。この際、事実に反する債権者リストをわざと提出した場合、免責の不許可事由になります。

  • 一部の権利者を除外した場合だけでなく、架空の権利者を記載する場合を含みます。
  • 一部の権利者を載せない理由としては、その人に損害を与えるようとする場合もありますが、縁故者であるため免責を受けて迷惑をかけたくないというケースがあります。このような場合にも不許可事由となるため注意が必要です。
  • 制度の主な目的は、財産を精算して債権者に公平に分配する点にあります。権利者の情報に誤りがあれば、この目的を達成することが不可能となってしまいます。単に記載を失念するなどの単純ミスではなく、故意に行ったのであれば、制度の根幹を否定する重大な違反行為にあたるため原則として認められないこととされたのです。
  • わざとではないケースであっても、ペナルティーが課されることがありますので気をつけなければなりません。くわしくは別の項目を参照してください。
▼ 詳しい解説
不許可
28裁判所が行う調査に協力できるか?

免責の手続きをする際には、債権者のリストを提出する必要があります。この際、事実に反する債権者リストをわざと提出した場合、免責の不許可事由になります。

  • 免責制度が認められている背景には、公正妥当な手続きが行われているという信頼があります。この信頼が失われてしまえば制度の根幹を揺るがすことになります。
    裁判所の調査は公正妥当な手続きを行う上で必須のものです。ここで嘘をつかれてしまったり、説明をしてもらえなかったりすれば、手続きの前提が崩れてしまいます。
    債務者は借金などをなくしてもらえるという大きなメリットを受けるわけですが、その分債権者は損をすることになります。それだけの迷惑をかける以上、相応に協力する義務があるのです。
  • ギャンブルや浪費による借金は免責されづらいと思っている人が多いですが、不許可となることはよほど悪質な場合を除いて普通はありません。裁判所は、反省して同じような過ちを繰り返さない姿勢を重視しています。説明を拒否するような行為は反省する態度とは真逆のものであり、ギャンブル等よりも不許可となるおそれが高いとされています。

【裁判所の行う調査とは】
債務者のもっている資産の状況に加え、相手方である債権者なども調べます。
本来破産手続きは、債務者の財産を精算し債権者に公平に分けるものですから、そのために必要な範囲で行われます。

▼ 詳しい解説
手続き
29免責審尋(めんせきしんじん)を理解しているか?

免責するか否かを決定する前に、裁判官が破産者と直接会って話を聞くための手続きです。
現行法では必須とはされていないためあくまで任意とされていますが、多くの裁判所で実施されています。

  • 実施の方式は法定されていません。個別に面談する方式や複数の破産者(10人から30人程度)を法廷に集めて面談する方式があります。
  • 一部の裁判所では書面審理だけで済ませて実施しないところもあります。
  • 尋ねられる内容としては、本籍地や住所などの本人確認、破産や免責の意味、債務が生じた原因、今後の方針などです。具体的な回答の仕方については弁護士に相談してください。
  • 弁護士に手続きを依頼していたとしても、代わりに行ってもらうことはできません。必ず本人が出頭しなければなりません。もちろん一緒についてきてもらうことはできます。
  • 服装などに決まりはありませんが、裁判官の印象を悪くしないものでなければなりません。持ち物などを含めて弁護士に相談することが大切です。
  • 所要時間は弁護士が選任されている場合には、通常数分以内に終わります。債権者集会が開かれるケースでは同一日に続けて行われます。
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手続き
30債権者集会が開催されうることを理解しているか?

同時廃止とならず管財人が選任された場合、債権者集会が開催されます。
債権者の知らないところで手続きが進んでしまわないように、債権者の意思を手続きに反映させるための制度です。

  • 管財人が調査結果(収支、財産の状況等)について説明を行い、必要な意見を述べます。債権者の出席が認められており意見や質問をすることが可能です。
  • 免責審尋の期日と同一日に行われ、通常は数分で終わります。
  • 債務者の中には、債権者集会に出ると権利者から糾弾されると考えて過度に恐れる方がいます。しかし実際には多くのケースで債権者は出席してきません。主な貸し手である金融機関や消費者金融などの業者は、出席して意見を述べたところで返してもらえないことを理解しているからです。交通費や労力をかけてまで出頭することは普通しないのです。
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不許可
31破産管財人の行う手続きに協力できるか?

破産管財人の仕事を妨げる行為をすると原則として免責が否定されます。ただし、不正な手段を使った場合に限られます。

  • 破産管財人は、裁判所から選任されて破産者の財産を調査して精算し、債権者に分配する権限を与えられた人のことです。免責に関することなど裁判所に意見を述べることもします。
  • 公正な手続きが行われなければ、債権者は自分の権利が十分に守られていないと感じ、破産制度に対して不信感を抱くことになります。債権者に痛みを負担してもらう以上、手続きへの信頼を確保する必要があるため規制されています。
  • たとえば、管財人が破産者の占有する物を売却しようとして引き渡しを求めたのに従わなかったり、嘘をついて売却を免れようとしたりする場合です。
  • 管財人は職務執行に際して抵抗を受けるときは、警察上の助けを得ることができるとされています。そのため、実力で抵抗してもどうにかなるものではありません。素直に協力することが重要です。
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不許可
32過去に免責決定を受けていないか?

過去に免責を受けたことがある場合、当該許可決定が確定した日から7年以内に新たな免責を申し立てることは、不許可の対象となります。

  • 免責という制度は、本来果たすべき法的な義務を免れさせるものであり特別に認められているものです。そのため、繰り返し短期間で免責を受けるような事態は好ましくなく、モラルの破壊を招くことになりかねないため規制されています。
  • 給与所得者等再生における再生計画が行われた場合や、個人再生において再生計画の遂行が難しいとして免責された場合(ハードシップ免責)にも同様の規制があります。
  • 他の事由と同様に裁量免責の可能性があります。期間内の破産だからといってあきらめる必要はありません。
  • 期間を経過している場合には対象外のため他に理由がなければ免責されます。ただし、不許可事由がほかにもないか厳しめに調査される可能性があります。たとえば、普通は管財人が選任されないケースでもくわしく調べるために選任されたり、事情をくわしく尋ねるために債務者審尋が実施されたりすることがあります。
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不許可
33各種の義務に違反した場合の免責手続き上のペナルティーを理解しているか?

破産法に規定された義務に違反すると原則として免責は否定されます。

  • 破産管財人等から破産することになった経緯や、資産や負債の状況など破産について質問があったときは、これに応じる義務があります。
  • 破産の手続きが行われることとなった場合、自分の家や土地、お金(預貯金)、有価証券など裁判所が定めた財産の内容を明らかにした文書を、遅滞せず裁判所に差し出す義務があります。つまり、重要な資産を明らかにする義務です。
  • 管財人は、裁判所から免責不許可事由の存否や裁量免責をするか否かの判断をするための調査を求められます。管財人から当該調査のために必要な協力を要請されたときはこれに応じる義務があります。
  • 免責審尋や債権者集会などに出頭を求められたときは、これに応じる義務があります。
  • 同時廃止とならなかったときは、裁判所から許可を受けずに居住地を変えてはいけない義務があります。
  • 代表的な義務としては以上のものがあげられますが、ここにあげられたものに限らず破産法上の義務に違反すると不許可の対象となるので注意が必要です。
    不許可事由に該当しても裁量によって免責を受けられることがありますが、その際に裁判所が重視しているのは、これまでの生活状況を反省し改善することが期待できるか否かということにあります。そのため、手続き中の義務違反は反省の態度に問題があると判断されやすく、他の不許可対象よりも深刻なものといえます。
  • 具体的にどのような義務があるのか、注意すべきポイントは何かなど弁護士からアドバイスを受けることが大切です。
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不許可
34免責不許可事由に該当しても裁量によって免責を得られることを知っているか?

不許可事由があったとしても、裁判所はさまざまな事実と照らし合わせて、妥当だと判断したときは免責することができます。

  • 破産手続きにおいてよく勘違いされやすいのは、不許可事由があると一切免責が受けられないというものです。実際には不許可事由に該当してしまう方が多くいるため、裁量によって認められることがめずらしくありません。自己破産者のほとんどが免責を認められていますが、その背景には裁量免責という制度があるからです。
  • たとえば、ギャンブルや浪費で作った借金や、前回免責されてから7年経っていないようなときは免責不許可事由となりますが、このようなケースであっても悪質とはいえないときは裁量によって認められることが大半といえます。免責は認められないだろうとあきらめずに弁護士に相談することが大切です。
  • 考慮される内容に制限はありませんが、裁量免責を得るためには押さえておくべきポイントがあります。生活改善の姿勢と手続きへの協力態度です。誠意のある姿勢を示すことで免責される可能性が高まります。
  • 裁量免責となるケースは前提として免責不許可事由があることになります。気をつけるべきなのはこのようなケースでは管財型として処理されることが多いという点です。くわしい事情を調べるために管財人の選任が必要となるからです。その分費用と時間がかかることになります。
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非免責
35免責不許可事由と非免責債権の違いを理解しているか?

たとえ免責が認められたとしてもすべての債務がなくなるわけではありません。一部の債務については免責の対象から外されています。これを非免責債権といいます。免責不許可事由とは異なる制度です。混同しないように注意が必要です。

  • 免責が下りると原則として債務を弁済しなくてもよくなります。しかし、法律で定められた一部の債務については支払い義務が存続します。
  • 例えば、所得税や住民税、相続税、自動車税などの税金、国民健康保険や国民年金、介護保険などの社会保険料、下水道使用料や公立(認可)保育所の保育料、悪意による不法行為や、故意(重大な過失)による人の生命や身体を侵害した不法行為による損害賠償請求権、扶養義務、債権者リストに載せなかったもの、罰金等があります。
  • 免責不許可事由とは別の問題ですから非免責債権が存在するからといって免責が不許可となるわけではありません。
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非免責
36税金や社会保険料、公共料金の滞納があるか?

税金や社会保険料、一部の公共料金など、国税徴収法により国税と同様に徴収可能な請求権については非免責債権とされています(国税徴収の例により徴収するものを含む。)。

  • 所得税、住民税、相続税、固定資産税、自動車税などの税金は免責許可決定を受けたとしてもその対象外とされ、時効にかかっていない限り支払い義務が残ります。租税については公平分担の思想が強いため免責を認めないのです。
    免責されると思いこみ支払いを怠ると延滞税が発生することになるので注意が必要です。特に納期限から2か月を超えると利率が一気に上がるので気をつける必要があります。
  • 国民健康保険や国民年金、厚生年金、介護保険料などの社会保険料も免責対象外です。 これらについても延滞金が発生しますので注意が必要です。
  • すぐに支払うことができない場合には担当の役所に相談することが大切です。多くの場合、分割での返済を認めてくれるなど支払いを猶予してくれます。その要件として誠実さが要求される点にも注意してください。
  • このほかにも、下水道の使用料、駐車違反による違反金、公立の保育園や認可保育園の保育料も強制徴収可能であるため免責されません。

【他の公共料金について】
強制徴収の対象でないものは免責となります。 例えば、上水道、電気、ガス料金、公営住宅の家賃などは免責対象です。ただし、電気ガスなどの継続的な契約に基づく債務については例外がありますので個別の項目を参照してください。

【滞納処分による差押えについて】
行政庁は租税等の強制徴収を行うため、裁判所を通さずに滞納者の財産を差し押さえることが可能です。 一般の債権であれば破産手続きが始まると破産財団(破産管財人に権利が属する破産者の財産など)の財産を差し押さえることはできず、すでに差し押さえられている場合にはその手続きは失効または中止させることができます。滞納処分についても破産財団の財産を差し押さえることができないことは同じです。
しかし、破産手続開始決定前になされた滞納処分については中断されないことになっています。そのため、滞納処分による差押えを免れるためには、租税等を納付するか納付を猶予してもらう以外にありません。

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非免責
37不法行為による損害賠償債務がないか?

破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権や、故意または重大な過失によって加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権は非免責債権です。

  • 故意や過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害することを不法行為といいます。不法行為によるものがすべて非免責となるのではなく、悪意によるものや、故意または重過失による生命や身体侵害に関するもののみ該当します。
  • ここでの「悪意」とは、積極的に相手に危害を加えようとする意欲のことです。窃盗や横領、詐欺、背任などの何らかの犯罪行為が代表的です。自己破産を予定していながら借金をしたりクレジットカードを利用したりした場合にも該当することがあるので注意が必要です。返すつもりがないのにそのことを偽って借りるような行為は詐欺にあたるからです。
  • 人の生命や身体を害する行為について生じた債務は、「悪意」がなくても「故意」や「重過失」があれば免責されません。暴力をふるったり飲酒運転により事故を起こしたりして怪我をさせてしまったような場合です。怪我をさせてしまった場合でも一般的な不注意によるものであれば免責対象となります。物損事故の場合にも免責対象です。
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非免責
38離婚による慰謝料の支払義務があるか?

財産分与や離婚に関する慰謝料請求権については基本的に免責対象です。ただし、暴力を伴うものなどは非免責債権となりえます。

  • 財産分与や離婚慰謝料についても特別扱いされることはありません。
  • 不倫による慰謝料が非免責債権とされるには、その行為が「悪意」でなされたことを要します。ですが不倫による悪意性が認められることは一般的ではなく、通常は免責されると考えられます。
  • 暴力によって怪我をさせたことに伴う慰謝料については非免責債権とされます。
  • 暴力を伴わない暴言等を理由とするものについては「悪意」によるものかが問題となり、事案により異なるため弁護士にアドバイスを求めることが大切です。
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非免責
39婚姻費用や養育費などの支払義務があるか?

夫婦間の協力扶助義務や婚姻費用の分担義務から生じる請求権、子への監護義務につき生じる請求権は免責されません。これから発生するものに限らず、すでに発生しているものもすべて支払義務があります。

  • 破産手続き開始時点で滞納しているものについては、養育費であっても破産手続中は弁済することが認められていません。免責はされないですが手続き中の支払いは制限されているのです。もし支払うと一部の債権者を優遇した偏頗弁済として免責不許可事由に当たるおそれがあります。
  • 破産手続開始後に支払日が来るものについては破産債権ではないため破産手続きの対象外となり、破産手続き中であっても支払わなければなりません。

【子の監護に関する義務】
養育費の支払い義務のことです。具体的には生活費、教育費、医療費等の負担義務です。

【養育費等の減額】
養育費や婚姻費用の支払いが困難な場合には減額を交渉していくしかありません。
相手が任意に応じてくれない場合には減額請求調停を申し立てます。
一般の調停と異なり合意に至らなかったときには審判手続により結論を出してもらえます。

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非免責
40その他の親族への扶養義務があるか?

民法の規定により一定範囲の親族に対する扶養義務が課せられています。この義務によって生じるものも免責の対象外です。

  • 直系血族と兄弟姉妹については当然に扶養義務が生じます。また、特別な事情があるときには3親等内の親族に対する扶養義務を家庭裁判所から課せられることもあります。
  • 直系血族とは、親子や祖父と孫の関係のような血統が直下するものをいいます。養親子も含みます。配偶者の血族や甥(姪)とおじ(おば)の関係は直系血族ではないため特別な事情があるとして家庭裁判所から扶養義務が認められたものに限り対象です。
  • 衣食住に関するものや医療費など生活上必要な費用が対象です。

【婚姻、養育、扶養費用などに類する契約に基づくもの】
形式的には和解契約に基づく損害賠償請求権であっても、その内容が婚姻費用などの場合があります。このようなときにも非免責債権にあたります。

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非免責
41使用人に対する未払いの給料や退職金などがあるか?

個人事業主である場合に他人を雇用していることがありますが、使用人に対する未払いの給料債権等は免責されません。

  • 雇用関係によって発生したもの全般が対象となるため、給料債権のほかに退職金も含まれます。また性質は異なりますが積立金などの預り金も対象です。これらの権利が非免責債権とされている趣旨は、労働者にとって生活していく上で不可欠なものであり、免責を認めてしまうと安心して労働することができなくなるからです。
▼ 詳しい解説
非免責
42債権者リストに記載しなかった場合のリスクを理解できているか?

裁判所に免責を求める際、債権者名簿を提供する必要がありますが、知っていて名簿に載せなかった請求権については非免責債権となります。ただし、債権者が破産手続きの開始決定を知らなかったときに限ります。

  • 破産の申立てをする際に債権者一覧表を提出しますが、通常免責の許可も一緒に求めるため債権者一覧表が債権者名簿にあたります。
  • 記載しなかったからといって直ちに対象となるわけではありません。知っていたのにあえて記載しなかった場合にはじめて該当します。つまり、単純なミスによって記載をし忘れたようなときには対象外です。ただし、過失の程度によっては非免責債権とされます。
  • リストにない債権者は破産手続きから漏れてしまうこととなり、その権利を確保することができなくなってしまいます。一方で権利の存在を知らなかった場合にも免責を否定してしまうのは行き過ぎといえます。そこで意図的に記載しなかったようなケースに限定して非免責債権とされています。
  • リストに記載しなかった場合でも債権者が破産手続きの開始決定を認識していたときは非免責債権とはなりません。本来の手続きを受けられるからです。
  • 一部の債権を非免責債権とするためにあえて記載しないことがありますが、免責不許可事由に該当する可能性もあるためしてはいけません。もし一部の債務を返済したいのであれば手続き終了後に任意に支払うことは可能です。

※後で記載漏れに気づいた場合の対処法については別の項目を参照してください。

▼ 詳しい解説
非免責
43罰金や追徴金等の未払いがあるか?

罰金や科料、追徴金、刑事訴訟費用、過料を支払う義務がある場合、これらの義務にかかる請求権は非免責債権となります。

  • 罰金と科料は刑罰の一種として課せられる金銭的制裁のことです。
  • 追徴金は犯罪によって利益を得たような場合にこれを没収できないときに課せられる処分です。
  • 刑事訴訟費用は刑事訴追された場合にかかる費用です。国選弁護人や証人、鑑定人などへの費用です。私選の弁護士費用については対象外です。特に執行猶予判決を受けた場合に課せられることが多いといえます。
  • 過料は刑罰ではない行政上の秩序罰であり、自動車のスピード違反など道路交通法違反での反則金が代表的です。特に反則金については免責されると思い込み支払わないでいると刑事手続きに移行するおそれがあるため注意が必要です。
▼ 詳しい解説
非免責
44生活保護費を資力があるのに受給したり、不正な手段で受給したりしたことがあるか?

生活保護は生活困窮者のための制度ですから、資力があるのに受け取ったり、不正な手段で受け取ったりした場合にはこれを返還する義務が生じます。この義務にかかる請求権は原則として免責対象外です。

  • 生活保護の申請時に嘘をつくなど不正な手段で保護を受けた場合、その費用は強制徴収の対象であり免責対象外です。
  • 不正な手段がない場合であっても、資力があるのに受給したときには返還義務があり、原則として強制徴収の対象となり免責対象外です。ただし、保護の実施機関の責めに帰すべき事由により、保護金品を交付すべきでないのに交付したことで資力を有することになったときは免責対象です。

※不正な手段がない場合における返還義務について免責対象外となるのは平成30年10月1日以降の保護費です。

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非免責
45非免責債権であることを理由に訴訟を起こされたり強制執行されたりする可能性を認識しているか?

自己破産手続きにおいて裁判所は個々の債権について非免責債権にあたるか否かという判断はしてくれません。そのため、免責を受けたにもかかわらず強制執行を受けたり、訴訟を起こされたりするリスクが残ります。

  • 破産手続きが終了すると債権者リストの記述は確定した判決と同じ効果が生じるため、破産手続き中にストップしていた強制執行が、別途訴訟を起こさなくても再開できます。
  • 強制執行は原則として確定判決などの債務名義に執行文を付与してもらうことではじめて可能となります。そのため債務者としては執行文の付与に異議を申し立てることなどで対抗することが考えられます。
  • 訴訟を起こされた場合には免責を受けていることを訴訟手続の中で主張していくことになります。

【執行文とは】
債務名義に強制執行できる力があることなどを裁判所書記官や公証人が証明した文言のこと。

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否認権について

自己破産をするつもりでいるのに高価なものをタダで譲ってしまったり、一部の人だけに特別に弁済したりしたような場合、そのような財物や弁済されたお金はどうなるのでしょうか。

否認
46弁済や財産の処分が否認される可能性を理解しているか?

破産手続開始前だからといって弁済や財産の処分を無条件に認めてしまうと債権者を害するおそれがあります。そのため一定の行為については、破産管財人により否認されて財産が取り戻されることになっています。

  • 破産手続きは債務者の財産を債権者に分配する手続きですが、原資となる財産が減ってしまうとその分だけ債権者を害するからです。
  • 否認により当該処分は効力を失い、処分された財産は破産手続きによる配当の対象となります。
  • 免責の許否とは異なる制度であるため、否認されるおそれの高い処分があったときでも直ちに免責が否定されるわけではありません。
  • 否認は破産管財人の仕事なので管財事件となってしまいます。そのため同時廃止よりも費用が多くかかることに注意が必要です。
▼ 詳しい解説
否認
47債権者に損害を与えると知っていながら、その行為をしたことがあるか?

債権者に不利益を与えることを破産者が認識してした行為は否認される可能性があります。ただし、利益を受けた人が破産債権者に不利益を与えることを認識していなかった場合は対象外です。

  • もっている財産を積極的に減らす行為全般が対象となります。それだけではなく借金などの債務を増やすことも含まれる点に注意が必要です。いずれにしても債権の回収が難しくなるからです。
  • 取引の相手方を害するわけにはいきませんから、利益を受けた人が行為時に他の債権者に不利益を与えることを知らない場合には対象となりません。

【詐害行為とは】
債権者が正当な弁済を受けることを阻害する、債務者による責任財産の減少行為のこと。

▼ 詳しい解説
否認
48支払いができなくなった後に債権者に不利益となることをしたか?

支払の停止か破産の申立て後に、債権者に不利益を与える行為は否認されるおそれがあります。ただし、利益を受けた人が当該行為の時に、支払いの停止等があることと他の債権者を害することを認識していなかったときは対象外です。

  • 積極的に危害を加えようという意思までは必要とされていません。
  • 債務整理を弁護士に委任すると受任通知が債権者に発送され取り立てが行われなくなりますが、このようなケースも支払停止に含まれます。
  • 取引相手の保護のため、利益を受けた人が行為時に支払いの停止などを認識していないときは対象外となります。
▼ 詳しい解説
否認
49無償で財産を譲渡したり、債務を負担したり、対価が十分でないのに財産を譲渡したりしたか?

支払いが停止されたり破産が申し立てられたりした後、あるいはその前6か月以内にした無償行為やそれと同等の有償での行為は否認されるおそれがあります。

  • 他のケースと異なり利益を受けた相手方が他の権利者に不利益を与えることを認識している必要はありません。なぜなら、相手方は財産を無償かそれに近い形で譲り受けているので、譲り受けた財産に見合う経済的な負担をしていないからです。つまり、無効にされたとしても大した損失を被らないと考えられるからです。一方で無償での処分行為は絶対的に債務者の財産を減少させるため債権者への影響が深刻になりやすいからです。
  • 贈与や債務免除など財産を積極的に減らすものだけではなく、債務を負担するような場合を含みます。たとえば、保証人となる場合が該当します。どうしても保証人とならなければいけないようなときは相当な保証料を発生させることが必要です。
▼ 詳しい解説
否認
50財産を処分し対価も妥当なものであったが、その対価を隠すなどして債権者に不利益を与えるつもりがあったか?

財産を処分した場合にその対価が相当なものであったとしても、対価として取得した金銭等を隠匿するなどして債権者に不利益を与えるおそれがあり、破産者がその行為の時に隠匿等の処分をする意図をもっていたときは、否認されるおそれがあります。ただし、隠匿などの行為をしようとしていることを相手方が認識していなければ対象外となります。

  • 不動産を金銭に換えるなど財産の種類について変更が生じたときに対象となります。つまり、同種のものと物々交換するようなケースは対象外です。
  • 相当な対価を得ていても、元の財産の状態よりも隠したり贈与したり、その他の債権者を害する処分をするおそれが高まるのであれば問題となるのです。たとえば、自動車を売却して現金にした場合、自動車の現物よりも隠匿などがはるかに容易となるからです。
  • 本来は相当な対価での処分なら債務者の自由といえます。対価である金銭を弁済に充てることを意図していることも多いはずだからです。そのため、他のケースよりも否認するためのハードルが高くなっています。
  • 行為の相手方の利益を無視することもできないため、贈与などをしようとしていることを相手方が知っていたことが必要とされています。
▼ 詳しい解説
否認
51一部の債権者のみを優遇して弁済や担保を提供したことがあるか?

支払いができなくなった後や破産の申し立て後に、破産者が偏波(へんぱ)行為をしたもの、つまり既存の債務に掛かっている担保を提供したり債務の消滅に関する行為をしたりした)ものは否認権の対象となりえます。また、破産者の義務といえないか、その時期が義務といえないものについて、支払不能になる前30日以内にされたものも同様です。

  • その弁済等が支払不能後にしたものであるときは、その不能の事実か支払が停止されていることを相手方が行為時に認識していた必要があります。
  • その弁済等が破産の申立て後にしたものであるときは、申立ての事実を相手方が行為時に認識していたことを要します。
  • 破産者の義務といえないか、その時期が義務といえないものについては、行為の時に、他の権利者を害する事実を相手方が認識していたことを要します。
  • 偏頗(へんぱ)行為を他の権利者を害する目的で行った場合には、免責不許可事由に該当したり、罪に問われたりするおそれもあります。

【偏頗行為とは】
平等に扱うべき債権者のうち、一部を特別扱いしてその者に対してのみ弁済をしたり担保を設定したりする行為をいいます。弁済の場合を特に偏頗弁済といいます。

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否認
52租税等の支払いが否認対象外であることを理解しているか?

租税や社会保険料、罰金等の支払いについては否認対象外です。ただし、これらの債務について立て替え払いをしてもらっている場合、立て替えをしてくれた人への支払いは否認権の対象となります。

  • 例外的な取り扱いが認められる理由は、租税等は配当の実施など破産手続きにおいて優先的に回収できる扱いとなっており、否認対象から外したとしても他の債権者を害するおそれが小さいためです。
  • 租税等の支払いができず他人に建て替えてもらうことがありますが、これはあくまでその他人への債務ですから立て替えてくれた人への支払いは対象となるため気をつけなければなりません。たとえば、会社員が休職している場合、所得がなくても住民税は前年所得に対し課税されるため会社が立て替え払いをしてくれることがあります。そうすると債権者一覧表に勤め先を記載しなければならなくなってしまうのです。会社に自己破産を知られたくない場合には、事情を知っている家族などに返済してもらう方法が考えられます(第三者弁済)。くわしくは弁護士に相談してください。
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否認
53破産手続き前に財産分与をしたか?

破産手続き前に財産分与をした際、それが不相当に過大な財産分与であったり財産を確保するために離婚をして財産分与した(=偽装離婚)と判断されたりすると、否認されるおそれがあります。

  • 破産手続き前に離婚している場合に、財産分与の金額が大きいと偽装離婚などを疑われ、詳しく調べるため管財事件とされるおそれがあります。
  • 離婚をすると夫婦の財産を公平に分ける必要があります。そのためには配偶者の財産を確定させる必要があるため、離婚にともなう財産分与自体は詐害行為とならないのが原則です。
  • 配偶者がどれだけ夫婦の共同財産の増加に貢献してきたかを具体的に検討する必要がありますが、特に理由がない限り適正な分与の割合は2分の1程度とされています。破産者またはその配偶者の貢献度が高い場合には、その内容を考慮して適正な割合が増減します。
  • 適正な範囲を超える部分は破産者の財産を無償で譲渡したと判断されることになります。
  • 財産分与と一口にいっても不倫などに伴う慰謝料や扶養目的でなされることもあります。このような事情も考慮して過大であるかを判断することとなるため精算目的の財産分与よりも判断が難しくなります。
  • 財産分与の約束自体に問題がなくても、約束した金銭の支払いを破産手続開始後やその直前に行うと偏頗弁済と判断され否認されてしまうことがあります。
  • 偽装離婚をして財産分与をした場合、免責不許可となったり罪に問われたりすることもあります。
▼ 詳しい解説
否認
54破産手続き前に養育費を一括で支払ったか?

養育費を一括で支払った場合にはその行為を否認される可能性があります。

  • 養育費は毎月一定額を支払っていくことが一般的です。家庭裁判所で養育費を決定される場合にも月ごとの支払いとされることが通常です。
  • 養育費はもともと子の監護に必要な範囲で発生するものです。つまり収入や環境によって変化する不確実なものであり、その性質上一括払いの対象となりにくいといえます。もっとも成人するまでの期間を計算した上で一括で支払うことは不可能ではありません。ただし、そのような一般的とはいい難い支払い方法をとる場合、偏頗弁済と判断される可能性が高くなります。
  • 養育費は免責対象外ですから子のためにあらかじめ支払ってもらう必然性がありません。にもかかわらず一括払いをあえて行うということは他の債権者の取り分を減らす目的があるのではないかと疑われることになるのです。
  • 例外的に、子が重い病気や障害をもっているなど必要な費用を確保する必要性が認められるようなケースでは否認権の対象とならない可能性があります。
▼ 詳しい解説
否認
55相続放棄をしたか? あるいはしようとしているか?

遺産を受け取らないために相続放棄を行った場合でも、当該行為を否認されることはありません。ただし、放棄をした時期によっては本来の効果は認められません。

  • 相続をしたとしても遺産を取り上げられてしまうのであれば、他の相続人に遺産がすべて渡るようにしたいと考えることは自然なことといえます。債権者の立場からすれば問題があるようにも見えますが、相続は身分行為であり他人が強制すべきものではないのからです。また相続放棄は積極的に財産を減少させるものではなく消極的に増加をさせないだけであることも、否認されない理由とされます。
  • 破産手続開始決定後は相続放棄をしたとしても「限定承認」の効果しか認められていません。そのため相続した財産も換価、そして債権者への配当の対象となります。
  • 放棄は家庭裁判所に申述することにより行います。放棄可能な期間は原則として自分が相続できることを認識したときから3か月です。
  • 破産手続開始決定後に相続が発生した場合には、換価、配当の対象となりません。相続放棄も本来の効果が認められます。当該決定後に取得した財産は破産手続きの対象外だからです。

【限定承認とは】
相続は現金や不動産などのプラス財産だけでなく借金などのマイナス財産も負担しなければなりません。そのため遺産よりも借金のほうが多いことがあります。このような場合に遺産の範囲で責任を負う相続の仕方をいいます。

▼ 詳しい解説
否認
56遺産分割協議を適切に行なったか?

遺産分割協議の際、破産を予定している者が財産を取得しないこととしたり、法定相続分より少なく取得することとしたりすると否認されるおそれがあります。

  • 身分行為とされる相続放棄と異なり、遺産分割協議は財産権を目的とする法律行為とされているからです。これは相続人になるかという問題ではなく、相続人であることを前提に共有となっている財産をどのように分けるかという問題にすぎないからです。
  • 特に破産手続き直前に遺産を取得しない旨の協議を行うと否認されるおそれが高くなります。
  • 相続自体が何年も前に発生していたが相続登記をしていなかったようなケースが問題となります。このような場合には登記をしていなかっただけで協議自体は行われているケースが少なくありません。協議が行われたことを証明するために遺産分割協議書も大切ですが、固定資産税の納税通知書や評価証明書の納税義務者欄に他の相続人の氏名が記載されていれば、その人に取得させる協議が成立していたと判断してもらえることがあります。あわてて協議書を作成し登記してしまうとかえって誤解を招くおそれがあるため注意が必要です。
▼ 詳しい解説
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法律上の制限について

自己破産をすると法律上さまざまな制約を受ける可能性があります。
ただし、多くの場合に制約を受けなくてすみます。
ここでは一般的な注意事項と誤解についてチェックしていきます。

制限
57許可を得ずに住居所を移転できなくなる可能性があることを理解しているか?

破産手続きが開始されると引っ越しや長期の旅行などに裁判所の許可が必要となります。ただし、同時廃止の場合には制限を受けません。手続きが終了したときも同様です。

  • 破産手続き中に破産者の居所がわからなくなってしまったり、住所が変更されてしまったりすると進行に支障が出るおそれがあります。そのため勝手にいま住んでいる場所から離れることはできません。しかし連絡がきちんと取れる状況ややむを得ない状況にあれば通常は許可をもらうことができます。
  • 同時廃止の場合にはそれ以上手続きが行われないわけですから進行に支障がでるという問題が生じないためこのような制限は存在しません。※多くの方は同時廃止となります。
  • 手続きが終了した場合も許可を求める理由がなくなるため制限がなくなります。
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制限
58郵便物をチェックされてしまうことがあることを理解しているか?

裁判所が必要と判断した場合、破産者あての郵便物が破産管財人に転送され中身がチェックされることがあります。

  • 提出された債権者リストに遺漏がないかをチェックしたり、隠し財産がないかを調べたりする必要があるため行われます。督促状から新たな債権者を見つけたり納税通知書などから申告されていない財産が見つかったりすることがあります。
  • 同時廃止の場合には管財人が選任されないため実施されません。
  • 対象は「郵便物」または「信書便物」とされているため、メール便や宅配便は対象ではありません。
  • 管財人が受け取った郵便物はチェックが終われば返してもらうことができます。
  • 直接管財人から受け取る方法もありますが郵送してもらうことも可能です。その場合、ふたたび転送されてしまわないように破産管財人からの送付であることが表示されます。そのため破産者であることが同居人などに知られてしまうおそれがあるため注意が必要です。
  • 転送は破産手続の終了まで行われる可能性があります。少なくとも数か月は郵便物が破産管財人へ転送されることになります。
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制限
59一定の職業につくことができなくなる可能性を理解しているか?

自己破産すると警備員や行政書士など一定の職業につくことができなくなります。ただし、免責などを受けることで再びつくことが可能になります。

  • 法律上の制限を受ける職業は多数に上りますが、代表的なものとしては、警備員、警備業者、宅地建物取引士、宅地建物取扱業者、管理業務主任者、生命保険募集人、社会保険労務士、税理士、公認会計士、弁護士、弁理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、中小企業診断士、旅行業務取扱管理者、旅行業者、通関士、卸売業者、教育委員会委員、外務員(金融商品)、金融商品取引業者、質屋、古物商、貸金業務取扱主任者などがあります。
  • 制限の仕方には、新たに当該職業につくことを禁止するものや、現在当該職業についている場合は必ずその地位を失うものと裁量でやめさせられることがあるものがあります。
  • 免責などにより復権することでこのような職業上の制限がなくなります。通常は免責が認められるため数か月程度で制限がなくなることが多いといえます。
  • 国家試験の合格が必要な職業の場合であっても試験に合格した事実がなくなるわけではありません。たとえば、宅地建物取引士となるために試験を受け直す必要はありません。
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制限
60会社の役員であるか?

株式会社において取締役、監査役、会計参与となっているときは破産すると退任することとなります。ただし、 その後再び株主総会で選任されればあらためて役員となることができます。

  • 株式会社と役員との関係は民法上の委任関係とされています。委任は当事者が破産手続きの開始決定を受けることで終了するとされているため取締役等の退任事由とされているのです。
  • 以前は、破産者は経営能力に問題があるとして欠格事由とされており再任することができませんでしたが、現在は再任することに問題はありません。
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制限
61保証人になれなくなる可能性を理解しているか?

保証債務を負う相手が金融機関など信用情報機関の会員の場合、5年間から10年は保証人となることは難しいといえます。それ以外の相手方の場合には保証人となれる可能性があります。

  • 家族など親しい人間から奨学金や住宅ローン、事業資金などの融資を受ける際に保証人となることを求められることがあります。この際、融資を受ける人間に対して審査が行われるのはもちろん、保証人についても十分な資力があるのか審査が行われます。
  • 自己破産をすると信用情報機関のデータベースに記録されます。当該データが削除されるまで5年から10年かかります。
  • 個人からの融資やアパートの賃貸借契約など信用情報機関に照会しないケースであれば、保証人となれる可能性があります。ただし、保証人とは別に保証会社を利用する必要がある場合には注意が必要です。保証会社が保証人について信用情報機関に照会する可能性があるからです。
  • 民法上の保証人の資格として弁済する資力があることが求められています。
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制限
62遺言執行者や後見人となっているか? あるいはその予定があるか?

破産すると職業上の規制対象となるのみでなく、遺言執行者や後見人となることもできなくなります。ただし、免責等によって制限の撤廃が可能となります。

  • 破産者が職業上の制限を受ける理由は、経済面で不安のある者を一律に規制することでその職業に対する信頼を担保することにあるといえます。そのため、職業として行うかに関わらず、その者に対する信頼が重要となる役割、すなわち財産を管理処分する権能をもつ遺言執行者や後見人となることも規制されています。
  • 遺言によって遺言執行者や未成年後見人に指定された場合に欠格事由に当たるか判断する時期は原則として遺言の効力発生時(亡くなった時)です。遺言の効力は遺言者の死亡時に原則として生じるからです。つまり遺言した人が亡くなった時に破産者であると就任できません。反対に、遺言書が作成された時に破産者であっても遺言者が亡くなった時に破産者でなければ問題ありません。
  • 免責などにより復権されることで制限が解消されます。
  • 遺言執行者や後見人となるためには、任意整理など他の債務整理の方法を検討することや、免責が下りるまでの期間に注意することも大切といえます。
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制限
63復権とはなにか理解しているか?

自己破産すると一定の職業につくことや遺言執行者、後見人への就任が制限されます。しかし、このような制限はいつまでも続くわけではなく、一定の要件を満たすと解消されます。

  • 権利が当然に回復するものと申立により回復するものに分かれます。
  • 当然復権が認められる場合は、1.免責の許可が確定すること、2.債権者の同意によって破産手続きの廃止が確定すること、3.再生計画の認可が確定すること、4.詐欺破産罪による有罪の判決が確定せずに10年が経過すること、の4つに分けられます。多くのケースで免責許可を得られますから通常は「1.」によることになります。
  • 例外的ではありますが、万が一免責を得られなかった場合でも「2.」から「4.」により復権は可能です。もっとも、債権者の同意は通常得られないため「2.」は現実的には難しいといえます。したがって、「3.」か「4.」を主に検討することになります。民事再生手続きを行い再生計画の認可が確定されれば復権します。
  • 免責されず同意廃止もされず民事再生も行わなかったとしても、確定判決で詐欺破産罪により有罪とされずに手続き開始決定時から10年経過すれば復権します。
  • 申立による復権は、弁済や消滅時効、債務免除などによって債務のすべての責任を免れた場合に、裁判所に申し立てることによって認められます。
  • 注意すべきは法律上の制限がなくなるにすぎないことです。クレジットカードを作ったりローンを組んだりすることはできません。これらは法律上規制されているわけではなく、金融機関が事実上制限しているにすぎないからです。
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制限
64選挙権がなくなるなど、事実ではない法律上の制限を信じていないか?

自己破産をすると職業上の制限を受けたり通信の秘密が制限されたりするなどある程度の自由が制限されます。しかし、自己破産という言葉の印象などから事実ではないペナルティーを受けると信じている人が多くいます。

  • 代表的な誤解の一つが選挙権や被選挙権がなくなるというものです。一定の罪を犯したような場合にこのような制限の対象となることがありますが、自己破産をすることで同様の規制を受けることはありません。
  • 制限行為能力者になるという誤解もあります。かつて浪費者が制限行為能力者の対象として規定されていたことからこのような誤解が生まれたと考えられますが、あくまで別の制度であり自己破産したからといって行為能力が制限されるわけではありません。
  • 戸籍や住民表に自己破産の事実が記録されるといううわさもあります。これも誤解であり記録されるのは破産者専用の特別な名簿です。しかも免責が認められなかった場合にのみ記録される扱いになっているため多くの人は記載されません。
  • パスポートが取得できなくなるという誤解もあります。他の項目で触れたように移動の制限を受けることはありますが、パスポートの取得そのものの制限はありません。
  • 身柄を拘束されるという話もありますが、これは嘘とまではいえません。裁判所が必要と判断したときには引致できるとされています。もっとも滅多に行われるものではありません。
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その他

ほかにも理解しておくべきことは少なくありません。

強制執行
65強制執行されなくなることを知っているか?

自己破産を考えている場合、債権者から強制執行をされ財産を差し押さえられるのではないか不安に感じている方が多いと思います。自己破産手続きの開始により強制執行はできないことになっていて、すでに行われているときは停止されることになります。

  • 破産手続きの種類によってすぐに失効するかいったん停止してから失効か続行かが決まります。
  • 管財事件のときはすぐに失効します。そのため新たに生じた給与債権などは全額受け取ることができます。破産手続開始決定後に獲得した財産は手続きの対象外だからです。
  • 同時廃止のときには直ちに失効することはありませんが免責の許否が決まるまで執行手続きは中止されます。免責になると失効し認められなければ続行となります。一時停止状態にすぎませんから給料であっても(差押禁止部分を除いて)受け取れないことに注意が必要です。
  • 強制執行は自然に止まるわけではありません。執行裁判所と破産を担当している裁判所が異なるからです。管財人がいるときはその人が手続きをしてくれますが、同時廃止のときは自分でしなければなりません。そのため弁護士に任せることをおすすめします。
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原因
66自分自身が保証人となっているか?

自分が主債務者となっている借金などが破産の原因である場合は多いですが、他人の保証人となりその返済に行き詰まることが原因となることもあります。

  • 保証人は主債務者が債務を履行できなくなる場合に備えて代わりに履行することを約束するため、破産できないのではないかと不安に感じる方がいるようです。ですが 保証人であっても自己破産により債務をなくすことができます。
  • 経営者が会社の保証人となることや、夫婦や親子で保証人となることは少なくありません。このような場合に主債務者と同時に手続きを行うと予納金が一人分で済むなど費用が安くなることがあります。同じ管財人が担当したり資料が共通であったりするためです。

【物上保証人とは】
他人の債務を担保するため自分の持っている不動産に抵当権を設定するような人を物上保証人といいます。競売された代金が債務に不足する場合でも借金を負うことはありません。

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2.手続きを進めようとする場合にチェックする

申立人

自己破産手続きは申立てによって始まります。

債務者
67手続きをとろうとしている方が債務者本人であるか?

破産を申し立てることができるのは債務者本人と債権者です。家族であってもそれだけでは手続きをとることはできません。

  • 自己破産に対するさまざまな誤解により手続きをとらない結果、身近にいる人が借金について悩むというケースがあります。そのような場合には破産に対する誤解を解いて手続きをとるように説得するほかありません。お金を貸しているような場合には債権者として申し立てることは考えられます。
  • 精神障害により判断能力がない場合には、成年後見制度を利用することで代理人として手続きをとることが可能です。
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外国人
68外国人であるか?

日本国籍を有しない人であっても自己破産することが可能です。

  • 日本国内に住所や居所、営業所があるか財産があることが必要です。
  • 外国に置いてある資産も破産手続きの対象となります。債権者も日本国内にいる人に限らないため本国の債権者も忘れずに申告しなければなりません。迷惑をかけたくないという理由で 本国にいる知人からの借金を申告しない方がいますが免責が不許可となってしまうため注意が必要です。
  • 在留資格が取り消されることもありません。在留資格の取り消しは在留許可の対象となっている活動を一定期間しないことや、不正な手段で資格を得た場合などに限られるからです。ただし、永住許可を得ようとする場合に支障が出るおそれがあるため 永住許可申請を先行して検討することも必要です。
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財産について

すべての財産上の権利を失うわけではありません。
今ある財産の種類、金額とこれから取得する財産に着目して考えることが大切です。

財産
69自由財産を理解しているか?

自己破産制度、特に免責が認められる理由は債務者の生活再建を図ることにあります。免責を得られたとしても財産をすべて失ってしまうと生活することができなくなってしまいます。そこで、換価配当の対象外となる財産(自由財産)が認められています。

  • これは3つに大別されます。1.新得財産、2.99万円以下の現金、3.差押禁止財産です。また、 裁判所は自由財産を拡張することができます。
  • 管財人が破産財団を放棄することもあります。どのような財産であっても換価処分しなければならないとするとそのための費用のほうが高くついてしまうことがあるからです。たとえば、売却見込みのない不動産について権利を放棄することがあります。
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財産
70現金、預金がいくらあるか把握しているか?

99万円以下の現金は自由財産となっています。預金とは区別されることに注意が必要です。

  • キャッシュとして保有している金額が99万円以下の場合には破産手続きを行ったとしても手元に残しておくことができます。
  • 預金は現金とは区別されており99万円以下であっても原則として自由財産とはなりません。例外的に20万円までの預貯金であれば、自由財産の拡張により手元に残すことができます(裁判所により取り扱いが違うことがあります。)。
  • 自己破産手続きの前に預金を引き下ろして現金化した場合、その時期によっては現金として認められないことがあるため注意が必要です。

【同時廃止との関係】
自由財産になるかという問題と同時廃止となるかは別問題です。
東京地方裁判所では現金として33万円以上を保有していると管財事件となります。裁判所によっては現金と預金併せて50万円以上の保有で管財事件として扱うところもあり、裁判所により運用が異なるため注意が必要です。

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財産
71差押え禁止財産を理解しているか?

強制執行による差押えが禁止される財産については自由財産とされています。

  • 民事執行法で差押えができないものについては破産手続きにおいても処分されません。
  • たとえば、衣類、寝具、家具、台所用品、畳、建具、職業上必要な道具、位牌、勲章、学習に必要な書類等、著作物などで公表していないものなどがあります。
  • 具体的な品名が公表されているものとしては、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、瞬間湯沸かし器、テレビ(29インチ以下)、ラジオ、掃除機、エアコン、ビデオデッキについては複数ある場合には1つのみ。ペット、整理たんす、洋タンス、調理器具、食器棚、食卓セット、エアコン以外の冷暖房器具については台数に関係なく禁止されています(裁判所によって取り扱いが異なる可能性があります。)。

【給与、年金について】 毎月支払われる給料などについては、強制執行による差押えが制限されています(原則4分の1まで差押え可能)。破産の場合にも、手続開始前の未払いのものについては同様の制限がありますが、手続開始後に取得するものについては新得財産として自由財産となります。

▼ 詳しい解説
財産
72自由財産の拡張を理解しているか?

新得財産、99万円以下の現金、差押禁止財産に該当しなくても自由財産として認めてもらえることがあります。

  • 自由財産は、破産者の生活再建のため認められているものです。一人ひとり生活環境が異なるため、個別の事情に合わせて最低限の生活資金などを考える必要があり、そのために自由財産の拡張が認められています。
  • 無制限に拡張が認められているわけではありません。基本的に一定の財産について一定の金額の範囲内で拡張を認める運用がなされています。財産の種類としては預貯金や自動車、退職金、生命保険の解約返戻金、住居の敷金返還請求権などがあります。金額については、個々の財産が20万円以下に収まるかという判断基準や、現金と併せて総額で99万円に収まるかといった基準があります。これらは裁判所によって取り扱いが異なるため注意が必要です。
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財産
73生命保険や学資保険などの保険に加入しているか?

解約返戻金がある場合には原則として解約しなければなりませんが、一定の場合には解約は不要とされています。

  • 生命保険や学資保険における積立型といわれる保険の場合、解約することで一定割合の金額が返金されることになります。解約によって生じる当該請求権も破産者の財産にあたるため換価のために原則として解約しなければなりません。
  • 解約返戻金が20万円までであれば、自由財産として認める扱いとなっています(裁判所により異なることがあります。)。破産手続き直前に解約すると、現金として扱ってもらえない可能性があります。
  • 解約自体は詐害行為とはなりません。受け取ったお金を債権者を害する形で使用した場合には否認権の対象となりえますが、現金として保管しているだけであったり、弁護士費用に充てるためであったりしたときは問題ありません。
  • 保険契約者ではなく、単に保険金の受取人であるときは解約されることはありません。
  • 契約者貸付制度を利用して解約返戻金を減少させる方法も検討できます(借りたお金を弁護士費用等に充て返戻金と相殺します)。ほかに返戻金相当額を親族などに支払ってもらうことで、解約を免れる方法もあります。
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財産
74退職金を受け取ったか? あるいは勤め先に退職金制度があるか?

すでに受け取り済みであるときは、通常の現金や預金として判断します。まだ受け取っていないものについては、見込額の8分の7が自由財産となります。

  • すでに受領しているのであれば一般の財産として扱われるため、現金の場合99万円、預金であれば20万円を超える部分が破産財団として取り上げられます。
  • 強制執行における差押禁止債権として、退職金の4分の3に相当する部分が規定されていますが、退職金の性質上、将来確実に受け取れる保証はないため8分の7という扱いがされています。つまり、配当の対象とされる可能性が8分の1のみに限定されています。また、8分の1を乗じた額が20万円以下となるときは全額手元に残しておくことができます(裁判所によって異なる可能性があります。)
  • 退職するか前払いを請求することも考えられますが、見込額を支払うことで破産財団から外してもらうことができます。
  • 退職金額を算定するためには、勤め先に退職金見込み計算書を発行してもらう必要があります。これは住宅ローンの審査などの際にも必要とされる、一般的な書類です。
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財産
75自動車を所有しているか?

自動車を手元に残せるか否かは、ローンの有無や売却見込額、自由財産の拡張の有無により決まります。また、自動車税にも注意が必要です。

  • 自動車ローンが存在しているときは、残すことは難しいといえます。一般的に所有権留保条項が付された契約を結んでいるため、自動車の所有権が自分にないためです。
  • ローンを一括で返済してしまう方法は、偏頗弁済となり免責不許可となったり、管財人から否認されたりするおそれがあるためすべきではありません。もちろん親族などに支払ってもらうことは可能です。ただし査定額が一定額以上となると売却されてしまいます。
  • 車の価値が20万円以下であるなら、自由財産の拡張により処分しない扱いをする裁判所が多いといえます。また、裁判所によって異なりますが、法定耐用年数(3年から6年)を過ぎた場合には自由財産としてくれる取り扱いをするところもあります。
  • 複数台所有している場合には、1台ずつ20万円を超えているかを判断する場合と総合で99万円以下となるかを判断する方法などが考えられますが、裁判所によって異なります。
  • 自動車税の納税義務者は、4月1日時点で自動車登録を受けている人であり、租税等は免責されない点に注意が必要です。
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財産
76株式などの有価証券を所有しているか?

株式、社債、ゴルフ会員権などの有価証券類は、原則として換価処分されます。

  • 取り扱いが裁判所により異なることはありますが、金額に関わらず株式などの有価証券類は自由財産ではないため、そのままでは手元に残しておくことはできません。売却して現金として保有できる可能性はあります。
  • 株式については、価格の算定が難しいものがあります。上場株式であれば算定は容易ですが、非上場株式や譲渡制限が付されたものの場合には、専門家による査定が必要となります。価値がないであろうと考えていた株式が高額であったり、反対に価値があると思っていたものが値段のつかないものであったりすることがあります。価値がないと思っても、申告しなければ財産の隠匿と判断され免責されなくなるおそれがあるため注意が必要です。売却が困難なものであれば管財人に放棄してもらうといった手段を取るか、あるいは自由財産の拡張が認められることもあります。
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財産
77家族の財産に影響がないことを理解しているか?

自己破産によって、家族が所有する財産に影響が生じることは、原則としてありません。

  • 生計をともにしているような場合に、家族の財産も処分されるのではないかと不安に感じる方が多いですが、家族であっても保証人になっているような場合でなければ責任を負うことはなく、その財産が処分されることはありません。名義だけ家族の名前にしているような場合には問題となることがあります。
  • 連帯保証人などになっている場合には、保証人として別途責任を負うこととなります。費用や手続きの簡易さから、一緒に破産したほうがいいケースも少なくありません。
  • 共用していた家財道具については自由財産として残せるものが多いため、過度に恐れる必要はありません。
  • 不動産などを夫婦で共有している場合には、破産者の持分が処分の対象となります。この場合、家族が持分を買い取らないときは、不動産を手放さなければならなくなることがあります。
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財産
78他人名義の預貯金、保険などの財産はあるか?

名義が他人のものであっても、実質的に破産者の所有に属すると判断されると処分の対象となります。

  • 家族名義の預貯金は、その内容が本当にその家族のものであるときには、処分されることはありません。しかし、実際名義を貸しているだけであるときは、破産者の財産として取り扱われます。
  • カードや通帳、印鑑の保管者、どういう経緯で入金されたのか、出金がどのような場合にされているかなどによって実質性が判断されます。
  • 名義に意味がないわけではなく、家族名義の財産であれば特に怪しいところがない限り調査の対象となりません(裁判所によります。)。
  • 光熱費などの生活資金が家族名義の口座から支出されていることが判明したときは、調査のため家族名義の通帳のコピーの提出を求められることがあります。これは生活状況を判断するために行われるもので心配はありません。
  • 財産をとられないために、家族名義などに変更することは許されません。否認されたり免責が下りなくなったりすることもあります。
  • 子供名義で銀行口座を開設しているケースが多くありますが、贈与されていることが明らかなケースであればともかく、普段から破産者の生活のために出金が行われているようなケースでは、処分の対象となる可能性があります。
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財産
79貸付金があるなど、他人に対して債権を持っているか?

財産には有形のものだけではなく、債権など無形のものも含まれます。

  • 他に財産がまったくないため同時廃止になると判断するのは早計です。20万円以上の価値のある貸付金請求権や売掛金請求権などの債権があると、管財事件として扱われることになります。
  • 経済的価値のある債権は財産といえるため裁判所に報告する義務があり、管財事件となるか否かの判断にも関わってきます。
  • 貸付金や売掛金であれば財産であるという認識がしやすいため報告漏れをしにくいといえます。気をつけなければならないものとして、不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求権があります。これも他人に対して金銭を請求できる経済的価値のあるものです。
  • 他人の保証人として代位弁済をしていたときには、求償債権が生じていることもあります。
  • 債権額だけで価値が決まるわけではありません。回収可能性の有無や見込額によっても変わります。
  • 手持ちの現金が少ないような場合には、自由財産の拡張により換価処分をされずに済むこともあります。
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財産
80不動産を所有しているか?

不動産を所有している場合多くのケースで管財事件となりますが、ローン残高の多さなどにより資産価値が少ないと判断されるときは、同時廃止が認められます。また、任意売却等により家を残せる可能性もあります。

  • 不動産は財産の中でもとりわけ高価なものであり、換価処分により管財人への報酬などをまかなえるため管財事件とされることが普通です。そのため、費用倒れになると判断される場合には同時廃止となります。その典型例が資産価値を上回るローンが存在するときです(オーバーローン)。概ね資産価値の1.2倍~1.5倍以上のローンがあるときは同時廃止とされています。
  • 同時廃止となるときでも抵当権の実行により競売にかけられてしまうため、所有権を維持することはできません。
  • 不動産を手放さないための方法としては、親族に買い取ってもらう方法があります。特に持分のみの所有の場合には、共有者に買い取ってもらう方法が有効です。持分のみを換価しようとしても買い手がつきにくく価格が下がりやすいため、管財人から買い取りやすくなることがあります。
  • 任意売却の際は、資産価値を客観的に把握することが重要です。不当に安く売却してしまうと詐害行為となり、否認されるだけでなく免責されないおそれが生じます。
  • 固定資産税は1月1日時点で登記されている所有者に支払義務があり、免責されないため注意が必要です。
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財産
81過払い金があるか検討したか?

過払い金返還請求権も財産であり、20万円以上となる場合には管財事件となります。その場合であっても自由財産の拡張を認めてもらえることがあります。

  • 2010年6月17日以前に借り入れされた人は、過払い金が発生している可能性があります。
  • 過払い金の返還請求権は99万円以下であっても現金ではないため、自由に処分することはできません。しかし、自由財産の拡張によって、過払い金返還請求権を自由財産として認めてもらえることがあります。
  • 破産手続き直前に過払い金を回収した場合、現金としてではなく元の債権として評価されます。
  • 過払い金発生の可能性がある場合に過払い金の調査をしていないと、破産管財人による調査のため管財事件となるおそれがあります。特に本人申立ての場合に、その可能性が高くなります。
  • 過払い金が高額な場合には、自己破産自体を避けられることがあります。
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財産
82直前に現金化した財産があるか?

現金は一定額まで自由財産として処分対象となりませんが、他の財産を処分してキャッシュにしても現金として認めてもらえないことがあります。

  • 預貯金や保険の解約返戻金、自動車などが20万円以下の価値である場合、換価せずに手元に残しておくことが認められています。一方で現金は99万円まで処分されずにすみます。そのため、20万円を超えるものについては、取り上げられることを避けるために処分して現金化することが考えられます。しかし、直前にこのような処分をしたとしても、元の財産として扱われることが一般的です。
  • 直前というのは危機時期以後とされていますが、少なくとも弁護士による受任通知がなされた後であれば、現金とは認められないことが多いといえます。
  • 有用の資に充てる場合には、その分は元の財産としては扱われません。たとえば、60万円の預金から破産手続の費用として40万円を引き出した場合、20万円の預金として扱われます。20万円以下ですから自由財産の拡張により処分されずにすみます。これが遊興費の目的であれば、60万円の預金が存在するものとして扱われるため、処分対象とされてしまいます。

【有用の資とは】
やむを得ない支出のことです。破産手続費用、医療費、公租公課の支出、生活費、学費、葬儀費用、転居費用が代表的です。

▼ 詳しい解説
財産
83どうしても手放したくない財産があるか?

マイホームや思い出の品などどうしても手放したくない財産がある場合には、その財産の種類や金額に応じて対応を考える必要があります。

  • 差押えが禁止されているか、自由財産を拡張できるか、換価処分費用がかかりすぎないかといったところがポイントとなります。20万円を超える価値があるか否かが重要な判断材料となります。
  • 残したい財産の価格が大きなものであるときは、自己破産の手続きによることは難しいといえます。その場合には、任意整理など他の手段を検討することとなります。
  • 住宅については、個人再生手続きを利用することで処分を免れる方法があります。住宅ローンを抱えている人にとっては、特に検討価値のある制度といえます。
  • 自動車やバイクについては、何年も経過しているなど資産価値が低くなっているときは処分を免れやすいといえます。
  • 財産目録に記載しないなど、資産価値のあるものを隠匿することは許されません。免責の許可が下りないだけでなく、犯罪として処罰の対象となることもあります。
▼ 詳しい解説
財産
84借家に住んでいるか?

アパートなどを借りて住んでいる場合、その物件から出ていく必要は原則としてありません。家賃の支払いは、滞納があるか否かによって対応方法が異なります。

  • 家主に自己破産を知られてしまうことは通常はありません。また、破産を理由として賃貸借契約を解消することはできません。解除できる旨の特約が結ばれていたとしても、当該条項は無効と考えられています。ただし、家賃を滞納している場合には、債務不履行を理由に解除されることがあります。滞納期間が短ければ解除されません。解除されたとしても立ち退きまで数か月かかります。
  • 家賃は生活していく上で必要不可欠なものですから、支払ったとしても偏頗弁済にはあたりません。ただし、家賃を何か月も滞納している場合には、滞納分を支払うと偏頗弁済となるおそれがあります。破産手続開始後に取得したものや自由財産から弁済することは可能です。滞納家賃も免責対象ですが、住み続けるためには支払うことが必要です。
  • 敷金返還請求権は本来自由財産ではありません。しかし居住用不動産について差し入れられた敷金返還請求権については、自由財産とするのが実務上の取り扱いです。もし拡張を認めないと、賃貸借契約を解除しなければならなくなり生活再建が難しくなるからです。
  • 新たに物件を借りることも可能です。信用情報機関に未登録の信販系でない保証会社を利用するか、連帯保証人を利用できる管理会社では審査に通りやすいといえます。しかし滞納の記録を共有している保証会社があるため、やはり滞納しないことが重要です。
▼ 詳しい解説
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人間関係への影響

自己破産を考える場合には、経済的なことばかりでなく、家族や保証人、勤め先との関係も考えておく必要があります。

人間関係
85家族は債務の存在を知っているか?

家族に知られずに自己破産ができるケースもあります。

  • 家族に知られてしまう可能性が最も高い出来事は、裁判所からの連絡です。これは、弁護士に依頼しておくことで裁判所からの通知が弁護士事務所にいくようにすることで対処可能です。
  • 家や自動車など高価な財産を所有している場合には、管財人によって処分されるため秘密にしておくことは困難です。
  • クレジットカードの機能である家族カードが利用できなくなるため、これにより発覚することがあります。
  • 家族がローンを組む際などに保証人となるように依頼されることがありますが、その際保証人審査に落ちることで気づかれてしまうおそれがあります。
  • 家計状況を把握するために、同居している家族がいる場合にはその課税証明書などの提出を裁判所から求められることがあります。
  • 同居していない場合には、家族が保証人になっているようなときを除き、知られないように手続きを行うことは可能です。
▼ 詳しい解説
人間関係
86親族や友人に対する返済にも制限があることを理解しているか?

親しい人間だからといって優先的に弁済してしまうと、自分がペナルティーを受けるだけではなく相手にも迷惑をかけることになります。

  • 支払不能後に一部の債権者のみを優遇して弁済することは、原則として許されていません。担保をたてることも同様です。人間関係を壊さないために安易な気持ちで返済してしまうと、免責が認められなかったり犯罪として処罰されたりするだけではなく、返済を受けた相手方は法定利息を付した金額を返還しなければならなくなります(管財人から訴訟を起こされることもあります。)。
  • 管財人が選任されるため同時廃止が認められなくなります。
  • どうしても返済したい場合には、免責が確定したあとであれば問題ありません。
▼ 詳しい解説
人間関係
87保証人がいるか?

自己破産をすると保証人に請求がいくことになります。保証人にできるだけ迷惑のかからない対応をすることが大切です。

  • 免責されることで債務を免れるのは破産者のみであり保証人は支払い義務が残ります。
  • 自己破産手続きが開始すると期限の利益を失います。一括での支払いを求められることとなり、保証人はある日突然多額の債務の請求を受けることになります。そのため事前に債務整理を検討していることを相談することが大切です。債権者を交えた話し合いにより分割払いを認めてもらえることがあります。
  • 保証人は通常主債務者に対し求償権を行使することができますが、この権利も免責により失うことになります。保証のある債務のみ特別に弁済をしたり保証人に財産を譲渡したりすることは許されません。管財人に否認されるほか免責が否定されることにもなります。ただし、破産後に任意に保証人に返済することは可能です。
  • 自己破産以外の債務整理の方法を検討することも有効です。
  • 保証人も支払いが困難であるときは同時に自己破産手続きをすることも検討します。労力や費用が節約できる可能性があります。
▼ 詳しい解説
勤め先
88勤め先から借り入れがあるか?

勤め先から借り入れがあるときは勤め先も債権者となります。ただし、勤め先に知られないように自己破産することは可能です。

  • 債権者を裁判所に報告しなければならず破産手続が開始されると裁判所は各債権者に当該事実を通知します。そのため勤め先も破産の事実を知ってしまいます。
  • 勤め先に自己破産の事実を知られないためには事前に返済して債権者リストから外せばいいことになります。ただし、破産者本人が返済すると偏頗弁済となり免責が下りなくなるなどの問題があります。具体的な対策としては家族や友人など親しい人に返済を肩代わりしてもらうことが有効です(第三者弁済)。この人達に対する返済は免責が認められたあとに行えば問題ありません。
  • 自己破産した事実は官報によって公告されるため官報をチェックしている一部の企業では破産した事実を知られる可能性はゼロではありません。
▼ 詳しい解説

信用リスクについて

新たな借入れができなくなるなど自己破産にはさまざまなリスクが存在します。自分が被るデメリットだけではなく家族などの周りの人に与えうる影響を知っておくことで対策を立てることが可能となります。

リスク
89自分自身で破産手続をしようとしているか?

自己破産手続きを本人が一人ですることも不可能とはいえません。しかし、弁護士がいることが前提となる各種のメリットが享受できなくなります。

  • 弁護士が債権者に受任通知をすることで取り立てをストップできます。しかし本人が手続きをとる以上このような効果はありません。借金に悩む理由の一つが取り立てに追われることですので無理をせずに弁護士に相談することが大切です。
  • 弁護士がいれば少額管財となるケースでも費用と時間のかかる通常の管財事件となってしまいます。
  • 東京地裁で実施されている即日面接制度も使えません(司法書士でも不可)。そのため期間が余計にかかります。
  • すべての手続を一人で行うため裁判所との連絡だけでも煩雑でありとても時間がかかります。
  • 過払い金が生じている可能性があるときは調査のため管財事件となることがあります。同時廃止を見込んで安くしようとしたためにかえって高くつく可能性があります。
  • 裁判所から自宅あてに連絡がされるため家族に自己破産を知られてしまう可能性が高くなります。弁護士に依頼することで連絡は担当の弁護士にいくようにしてもらえます。
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リスク
90借り入れすることがしばらくの間できなくなっても構わないか?

新たにローンを組んだりクレジットカードを作成したりするには自己破産から少なくとも5年以上経過する必要があります。

  • 自己破産に限りませんが債務整理をするとブラックリストに掲載されます。このリストは信用情報機関が管理しており機関によって掲載期間が異なります。銀行が加盟する情報機関(全銀協)では破産開始決定から10年間保持するため銀行系ローンは10年は組めなくなります。銀行系以外の場合にも免責決定から5年間記録が残るためこの間ローンを組むことはできません。
  • クレジットカードについては銀行系のカードであっても全銀協に加盟していないところが少なくありません。そのため免責決定日から5年以上経過していれば作れる可能性があります。
  • これらの期間が経過したとしてもクレジットヒストリーがリセットされてしまうため、実際にローンを組むことは難しいことがあります。その場合には審査の甘い流通系カードを利用したり携帯電話の分割払いを利用したりすることで実績を作ることで審査に通りやすくなります。
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リスク
91保証会社の審査に通らなくなるリスクを理解しているか?

新たに賃貸物件を借りる場合、家賃保証会社によっては審査が通らないことがあります。

  • 家賃保証会社には種類があり大きく分けて信販会社系とそれ以外のものに分けられます。信販会社系の保証会社については信用情報機関に加盟しているため自己破産の経歴を知られることになり審査が厳しくなります。
  • 信販会社系以外の会社であっても家賃の滞納歴を共有していることがあります。そのため滞納歴があると審査に通りにくくなります。自己破産する場合であっても家賃の滞納には気をつける必要があります。
▼ 詳しい解説
リスク
92家族がローンを組むことはできることを理解しているか?

家族が住宅や自動車などのローンを組むことは可能ですが事実上問題が起こることはあります。

  • 自己破産の効果は本人にしか及びません。そのため家族が借り入れしたりクレジットカードを作成したりすることは可能です。しかし、破産者は保証人としての審査が通らないことがあるため事実上ローンを利用しづらくなることがあります。また、家族が同居している場合には自社の顧客情報から名字や住所が同一であることにより破産の事実を把握され審査にマイナスとなるおそれがあります。
▼ 詳しい解説
リスク
93家族もクレジットカードが使えなくなる可能性を理解しているか?

クレジットカードが家族名義のものであれば無効にはなりません。ただし破産者名義の「家族カード」であるときは使用できなくなります。

  • 自己破産による直接的な影響は自己破産者本人にしか及ばないため家族名義のカードはそのまま使うことができます。
  • クレジットカードには名義人本人が使用する通常のカードと、そのカードを元に家族が使用するために発行される家族カードがあります。家族カードは元のカードの名義人に対する信用を前提に発行されるものであることから名義人が破産することで使用できなくなります。
  • 家族が同居している場合にはその家族が新規にカードの発行の申込みをした際に審査が厳しくなる可能性は否定できません。破産者本人の代わりに申請するケースがあるためです。
▼ 詳しい解説
リスク
94保証人として破産した場合の影響を理解しているか?

債務の中に保証債務があった場合、主債務者には追加の担保を差し入れる義務が生じます。

  • 保証人は十分な資力があることが要件とされているため、債権者は債務者に対して新たな保証人を立てるよう要求することができます。
  • 追加の担保を立てないとローン全額の一括返済を要求することができます。もっとも実際のところは主債務者が弁済をきちんと行っている限り一括での返済を要求することは通常ありません。自分から申告しなければ破産の事実を債権者が把握することは難しく、そのため主債務者に連絡がいかないことから主債務者にも知られずにすむこともあります。
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リスク
95債権者となっている金融機関に預金口座はあるか?

弁護士が受任通知を出すと債務を負っている金融機関の口座は凍結されてしまいます。

  • 凍結されると出金ができなくなります。金融機関によっては入金もできなくなることがあります。その時点で預金が存在する場合には相殺されることになります。そのため受任通知よりも前に全額を引き出しておく必要があります。ただし破産手続の費用などに当てる場合などは問題がありませんが用途によっては問題が生じることがあります。弁護士に管理や用途について事前に相談することが必要です。
  • 給与や年金の振込先となっている場合には事前に別の銀行口座に変更しておく必要があります。変更しておかないと振り込まれたお金を引き出せなくなってしまいます。
  • 銀行が口座を凍結する理由は債権の回収のためです。残高との相殺や保証会社から代位弁済を受けるまで凍結します。金融機関にもよりますが1か月以上かかると考えられます。
  • 電気ガス水道といった公共料金の引き落とし口座に指定されているときも事前に支払い方法を変更しておく必要があります。凍結によって引き落としもできなくなるからです。コンビニ等の窓口支払や他の金融機関の口座に変更する手続きを行います。
  • 新たにローンを組むことは問題がありますが口座を開設することは問題ありません。
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リスク
96銀行引き落としで支払っている債務はあるか?

クレジットカードの支払用口座や定期購入、分割払いによる引き落としに利用している口座の残高をゼロにしておく必要があります。

  • 一部の権利者のみを優遇して支払うことは原則として許されません。しかしクレジットカードの引き落としがされると事実上カード会社に優先弁済したことになります。偏頗弁済として免責が認められなくなるなどの不利益が生じる可能性があるため対策を事前にとっておく必要があります。具体的には口座に引き落とすお金がないように全額を引き下ろしておきます。
  • 引き出した預金は弁護士費用等の必要な費用にあてるのでなければ問題となることがあるため、引き出す前に用途や管理について弁護士の指示を仰ぐことが重要です。
  • 携帯電話の通信料や公共料金の支払については生活上必要な費用であることから引き落とされても問題ありません。
▼ 詳しい解説
ローン
97住宅ローンが残っているか?

住宅ローンがある場合にも自己破産することは可能です。ただし、住宅を維持するためには民事再生などの他の手続きを検討する必要があります。

  • 不動産は重要な財産であるため基本的に管財事件となり管財人により処分換価されることとなります。ですが不動産の評価額よりも多額のローンが残っている場合には同時廃止となることがあります。同時廃止となる場合でも抵当権が設定されているためローン会社による担保権の実行により所有権を失うこととなります(別除権)。
  • 住宅ローンのみ弁済を継続することは偏頗弁済となるため許されません。
  • 一般的に自己破産手続前に任意売却するほうが有利と考えられています。住宅ローンが評価額を大きく上回らない場合には管財事件となってしまいますが事前に売却しておけば同時廃止にすることも可能だからです。また、すべてのケースではありませんが引っ越しにかかる費用を負担してもらえることがあります。ただし、事前に処分するため引っ越しが早まる点に注意が必要です。
  • 抵当権者に弁済するために不動産を任意売却することは適正な価格である限り問題ありません。
  • 住宅ローンを残すためには民事再生(個人再生)手続きを利用する方法が考えられます。住宅の所有権を維持しながら住宅ローン以外の債務を圧縮することができます。
  • 【別除権とは】
    破産財団を構成する特定の資産に対して他の債権者に優先して弁済を受けることのできる権利。破産手続に縛られずに行使することができます。抵当権や質権、特別の先取特権などがこれに該当します。

▼ 詳しい解説
生活
98通信料金や光熱費等の継続的な給付に関する料金を滞納しているか?

財団債権に該当するものを除いて免責の対象となります。ただし、今後もサービスの提供を受ける場合にはいくつか注意点があります。

  • 電気、ガス、水道、携帯電話、インターネットのような利用サービスは「継続的給付を目的とする双務契約」と呼ばれます。当該契約から生じる利用料も通常の金銭債権ですから原則として免責対象となります。ただし、破産手続の申立てをした後、手続が開始される前に行ったサービスに関する利用料については財団債権となるため免責対象外です。
  • 破産手続が開始された後であれば、破産申立て前のサービスにかかる料金の滞納を理由に解約することはできません(破産法55条)。ただし、弁護士に依頼しなかった場合には相手が破産手続の開始を知らずにサービスを停止するおそれはあります。
  • 破産手続が開始されるまでは申立ての準備を始めてから時間差が生じるためその間にサービスが停止されてしまうおそれがあります。そのため返済してしまうのが確実なため第三者に支払ってもらう方法があります。自分で支払うときは偏頗弁済として問題となるおそれがあるため事前に弁護士に相談することが大切です。
  • 携帯電話の利用料金については破産申立て前の滞納分であっても支払わずにいると解約になるとの主張もありますが、破産手続開始後である限り破産法55条1項により解約はできないと考えられています。ただし一時的であってもサービスを停止される可能性があることや新規に契約することが難しくなるため返済することが望ましいといえます。
  • わずかな期間の滞納であれば弁済しても問題とならないこともありますが、基本的に公共料金の滞納はしないことが重要です。生活に不可欠なサービスの毎月の支払いについては偏頗弁済とはなりません。
    ※下水道料金は租税等に当たるため時期に関わらず免責対象外です。
  • 【財団債権とは】
    破産者のもっている財産の総体を破産財団といいますが、破産財団から破産手続を経ずに破産債権者に優先して随時弁済してもらえる債権のことをいいます。免責の対象は破産債権です。

▼ 詳しい解説
生活
99携帯電話の端末料金のローンが残っているか?

スマートフォンなどの携帯端末を分割払いで支払っている場合、原則として通信会社との利用契約は解消されます。

  • 端末本体の割賦払い契約は「継続的給付」とはいえず通常の金銭債権です。またその支払は通信料金と不可分になされる契約となっていることが普通であるため債務不履行により解除されることとなります。
  • 個別のケースにもよりますが弁護士が交渉することで例外的に解除されないケースも存在します。連絡手段がなくなると困るため可能であれば家族などに弁済してもらうことも大切です。
  • 自動車と異なり所有権留保がなされないため端末本体の返還を要求されることはありません。
  • 新規に携帯電話会社と利用契約を結ぶことは可能です。ただし利用料金の未払いがある状態では契約はできないため未納料金を返済するか免責される必要があります。未納情報は通信会社同士で共有されているため滞納歴のない会社であっても契約できません。
  • 端末の分割購入は少なくとも5年間は難しくなります。クレジット契約となるため審査が入り信用情報機関のデータが参照されるからです。
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プライバシー
100官報に掲載されることを懸念しているか?

自己破産すると官報に自己破産した事実が掲載されることになります。

  • 官報には住所や氏名が記載されます。そのため家族や職場の人、近所の人などに破産したことが知られてしまうのではないかと危惧される方が少なくありませんが通常そのような心配はいりません。なぜなら、官報を日常的に閲覧するような人は少ないからです。金融業者、信用情報機関、業務に必要な関係法令をチェックする法務担当であるなど一部の職についているような人達くらいです。掲載される内容は新規の法令、会社の公告など多岐にわたり、しかも自己破産だけで毎年何万件も掲載されます。したがって、官報に掲載されたからといって周りの人に破産の事実を知られる可能性はとても低いといえます。
  • 官報を閲覧している人たちで気をつけるべきなのは闇金業者です。自己破産すると正規の会社からは少なくとも5年間は借りることができなくなるため、ここにつけ込んでダイレクトメールで借金をするよう誘惑してきます。違法な高利で貸し付けるなど危険な業者が多いため注意が必要です。
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その他の注意事項

取り立て
101訴訟を起こされたり仮差押や強制執行を受けたりしているか?

破産手続が開始されると強制執行等の手続きができなくなります。

  • 受任通知を行うと取り立てはできなくなります。これは貸金業法等により制限を受けるためです。しかし訴訟を提起することは禁止されていません。回収手段がなくなってしまうからです。
  • 破産手続が始まると訴訟は中断され強制執行等もできなくなります。業者としては自己破産手続きがされる前に回収したいと考えて法的な手段を講じていると考えられます。そのため迅速に破産手続を行わなければ強制執行により財産が減少してしまったり破産費用に充てる予定の財産に仮差押えがなされたりして手続きに支障が出ることもあります。訴訟を起こされるおそれがあるときは速やかに弁護士に相談する必要があります。
▼ 詳しい解説
財産
102資産を現金に変えたか?

自己破産手続き前に財産を処分し現金に変えた場合には合理的な説明ができなければなりません。

  • 不動産などの財産を現金に変えた場合には隠匿や処分が容易となるため裁判所はこのような行為には神経を尖らせています。うまく理由を示せないときは管財人に調査させるため管財事件となることもあります。
  • 破産費用などやむを得ない出費のために預金を引き下ろすような場合には通常問題ありません。
  • 問題となりやすいのは不動産などの高額な財産の現金化です。このような場合にはできるだけ弁護士に依頼し契約自体から関わってもらうことが無難です。売却したお金も弁護士に保管してもらうことで現金化による免責不許可や否認権の行使などの危険性を減らすことが可能となります。特に家族など身近な人間に任意売却するケースでは弁護士が関わらない場合に不当な処分と見られがちですので注意が必要です。
▼ 詳しい解説
財産
103自己名義に直していない財産があるか?

不動産や自動車など登記・登録が必要な財産について所有権移転手続きをとっていないものでも契約や相続で自分が取得したものであれば換価処分の対象となります。

  • 登記や登録の名義は第三者に権利を対抗するためのものにすぎずそれによって所有権の有無が変わるわけではありません。
  • 特に問題となりやすいのは相続登記の未了です。遺産分割協議が成立していないのであれば法律上の相続分の割合に従って相続したこととなるため共有持分が処分の対象となります。
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自営業
104自営業(個人事業主・フリーランス)であるか?

自営業を営んでいる場合でも自己破産可能であり基本的な手続きも変わりません。ただし管財事件となりやすいなど注意すべき点があります。

  • 自営業だからといって他の人よりも資格制限などが厳しくなることはありません。自由財産も認められます。ただし、個人の権利関係とは異なり契約関係が複雑であることや資産の管理状態が一般個人よりもややこしくなりがちなため管財人が選任されることが普通です。そのため形式的に個人事業者となっているような単純なケースでは同時廃止になる可能性もあります。
  • 売掛金が20万円以上の場合には処分対象となるのが原則ですが、業務形態が請負など雇用以外のものであっても実質的に給料といえるときはその額の4分の3が自由財産となります。自由財産の拡張によって処分を免れる可能性もあります。
▼ 詳しい解説
自営業
105使用人がいるか?

給料や退職金、解雇予告手当等の支払いに制限があることがあります。公的な制度の活用も検討する必要があります。

  • 未払いの給料が破産手続開始の3か月以内の分であれば支払うことができると考えられます。財団債権となるためです。ただし弁護士の指示に従ってください。退職金についても財団債権となる範囲で支払い可能と考えられます。
  • 3か月分を超えるものについては偏頗弁済となるおそれがあるため弁護士に相談してください。
  • 支払いが困難な場合には公的機関による「未払賃金の立替払制度」を利用することで未払い賃金の80%を立て替えてもらえます。個人事業主であっても労災保険が適用される事業であれば利用可能です。この制度の利用には退職後6か月以内の破産申立てや労働基準監督署長への倒産認定申請が必要など要件があります。
  • 解雇予告期間が30日未満であるため解雇予告手当が必要な場合にも偏頗弁済となるおそれがあるため弁護士に相談してください。
▼ 詳しい解説
法人
106会社と個人の両方で手続きをとることを検討したか?

会社の代表者である場合には個人と会社の両方で破産手続をとることが一般的です。

  • 会社経営とは無関係の負債であれば別ですが会社経営が行き詰まり会社の保証人となっていたような場合には会社と代表者個人が同時に自己破産することが多いといえます。
  • 代表者のみが破産した場合には法人の財産は精算されないので経営を継続できると考える方もいるかもしれません。しかし会社に対して代表者が債権を有していれば管財人がこれを行使することになり支払不能となることがあります。よく見られるのが運転資金の貸付です。未払いとなっている役員報酬も請求の対象となります。
  • 一時的とはいえ破産によって役員を退任することとなるため経営などに影響が出ることも理由の一つです。
  • 会社の資金繰りが問題となっている場合には会社単独で破産させる方法も考えられますが、代表者が連帯保証人となっているときは困難です。
  • 同時に手続きをとることで費用が抑えられ何度も手続きをとる手間も省くことができます。
▼ 詳しい解説
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3.裁判所に書類を提出する前にチェックする

申立て書類

裁判所を利用するにはさまざまな書類を作成する必要があります。

記入
107債権者一覧表は正確に記入したか?

弁済しなければならない人のすべてを記載し変更があれば速やかに届け出る必要もあります。

  • 法律上返済すべきすべての人を記載しなければなりません。親族や友人、勤務先などから借金していたり立て替えてもらっていたりする場合にも記載します。考えつくもの全部を記載することが大切です。記載しなければ免責が否定されることがあります。
  • 記載の順序は取引開始の古いものから行います。
  • 債権者名、住所、借入残高など必要な事項は督促状や契約書などを見て正確に記入します。不明な事項は放置せず債権者に問い合わせてください。万が一債権者名や住所に誤りがあり通知が債権者に届かないときは免責が否定されるおそれがあります。
  • 住所は金融機関などの場合には債権管理センターや取引店を記載し不明の場合には本社を記載します。
  • 借入始期については債務が発生した時期を記載します。借金に限らず不法行為などの債務の場合も記載します。終期については最終の借入日などを記載します。
  • 債権譲渡や代位弁済などにより債権者に変更が生じたときは速やかに変更を届け出る必要があります。
  • 公租公課について書式が別に用意されている場合には一般用とは区別して作成します。
▼ 詳しい解説
記入
108自己破産申立書は正確に記入したか?

弁済しなければならない人のすべてを記載し変更があれば速やかに届け出る必要もあります。

  • 法律上返済すべきすべての人を記載しなければなりません。親族や友人、勤務先などから借金していたり立て替えてもらっていたりする場合にも記載します。考えつくもの全部を記載することが大切です。記載しなければ免責が否定されることがあります。
  • 記載の順序は取引開始の古いものから行います。
  • 債権者名、住所、借入残高など必要な事項は督促状や契約書などを見て正確に記入します。不明な事項は放置せず債権者に問い合わせてください。万が一債権者名や住所に誤りがあり通知が債権者に届かないときは免責が否定されるおそれがあります。
  • 住所は金融機関などの場合には債権管理センターや取引店を記載し不明の場合には本社を記載します。
  • 借入始期については債務が発生した時期を記載します。借金に限らず不法行為などの債務の場合も記載します。終期については最終の借入日などを記載します。
  • 債権譲渡や代位弁済などにより債権者に変更が生じたときは速やかに変更を届け出る必要があります。
  • 公租公課について書式が別に用意されている場合には一般用とは区別して作成します。
▼ 詳しい解説
記入
109陳述書に不備はないか?

破産に至った経緯や経歴を記述した書面の提出が必要です。内容が不正確だと免責を否定されるなど不利益を受けることがあるため慎重に記載することが大切です。

  • 裁判所ごとに書式が決められているためそれに従い記述します。収入状況、過去10年の経歴、家族関係、住居の状況、破産手続費用の工面方法、破産申立てに至った事情、免責不許可事由、以前の生活状況などが求められます。
  • 特に破産することになった経緯については時系列で記載するなどわかりやすく詳細に記載することが求められています。これにより破産原因があるのかや免責の許否などの判断が可能となるからです。
  • 人に知られたくない部分についても素直に記述しなければなりません。内容に虚偽があると発覚すれば免責が否定されることもあります。
▼ 詳しい解説
記入
110家計状況の記載に不備はないか?

家計の状況について記載した書面の提出が必要であり、口座の状況と照合されるため正確に記載しなければなりません。

  • 申立人個人だけではなく同居家族全体の家計状況を記述する必要があります。同居家族それぞれの収入や支出を詳細に記載します。書式があるため裁判所ごとに用意されたものを利用します。
  • 不必要な支出が明らかとなり返済は十分可能と判断され自己破産が否定されることもあります。弁護士に相談すれば返済不能であるか事前にチェックできます。
  • 少しでもよく見せようとして嘘の記載をすることは許されません。たとえば浪費を咎められることをおそれて不実の記載をすると免責が否定されることがあります。裏付けとなる資料の提出が求められるため正直に記載することが必要です。
▼ 詳しい解説
記入
111資産目録に不備はないか?

債務者が保有する財産について記述した書類を提出する必要があります。不正確な記述をすると免責が許可されないことがあります。

  • 現金や預金、不動産、債権など債務者が保有するものは正直に報告しなければなりません。
  • 「現金」については預貯金は含まれません。金額を裏付ける資料は基本的には不要とされています。しかし多額の預金を引き出したような場合に現金が少なすぎるようなときには使いみちを証明するために領収書などの提出が必要となることがあります。
  • 預金については証券会社やFXブローカーに預けている口座資金も含まれます。残高がない場合にもその旨の記載を要します。
  • 貸付金欄には貸付金のほか損害賠償金などの債権を記載します。回収見込額の欄がある場合には債権額のほかに現実に弁済が期待できる金額を記載します。回収不可能であるときはその旨記載します。
▼ 詳しい解説

添付書類

裁判所を利用した手続きには法令で要求される書類を添付しなければなりません。

書類
112住民票の写しを用意したか?

申請には住民票の写しを添付する必要があります。外国人の場合も同様です。

  • 本籍の記載が必要です。
  • 世帯全員の記載が必要です。
  • 申立ての3か月以内のものであることが必要です。
  • 外国人の場合にも住民票の写しを添付します。従前は外国人原票記載事項証明書が要求されていましたが入管法の改正に伴い外国人登録法が廃止されたため当該証明書は利用できません。在留期間が3か月以上など住民票発行の要件を満たしているか事前に確認が必要です。
  • 「住民票の写し」とは、役所から受け取った書面そのものを指します。これをコピーしたものではありません。コンビニで発行されたものでも構いません。
  • 裁判所によってはマイナンバーの記載がないものを要求するところがあります。事前に要否を確認する必要があります。
▼ 詳しい解説
書類
113収入証明書は用意したか?

給料等の収入を証明する書類を添付する必要があります。

  • 資産目録に記載した報酬・賃金(給与等)を裏付ける資料として給与明細書が求められます(直近2か月程度)。賞与についても明細書があるときはこれも添付します。
  • 源泉徴収票のコピー(直近1~2年程度)も添付します。源泉徴収票がない場合には所得・課税証明書を添付します。この書類は市区町村の役所で発行してもらえます。
  • 所得がない場合にも市区町村役場で非課税証明書を発行してもらう必要があります。
  • 自営業者など確定申告書の控えの添付が要求されることがあります。
    ※裁判所によって必要な期間など運用が大きく異る可能性があるため事前に問い合わせる必要があります。
▼ 詳しい解説
書類
114退職金に関する証明書は用意したか?

退職金の試算書や退職金がないことを証明する書面の添付が必要です。

  • 資産目録に記載した退職金請求権に関する事項を裏付ける書類として添付します。
  • この証明書は雇い主に発行してもらう必要があります(経理や総務に依頼します)。発行してもらうことができないような場合には退職金見込額がわかる雇用契約書や社内の支給規定でも代用可能です。ただしその場合には見込額が明示されていないため実際に計算した資料も添付します。
  • 退職金制度のない企業の場合にはその旨の証明書を発行してもらうか社内の規則などを添付することになります。
  • 会社に当該証明書の発行を請求すると破産しようとしていることがばれるのではないかと不安になるかもしれませんが、住宅ローンを組んだり保証人となるために金融機関から求められたりすることもある一般的な書面であり過度に恐れる必要はありません。
▼ 詳しい解説
書類
115預貯金に関する通帳のコピーは用意したか?

預貯金がある場合には通帳のコピーも必要となります。通帳がない場合には代わりに金融機関発行の証明書の添付などが必要となります。

  • 資産目録に預貯金について記載しますがその内容を裏付けるための資料が必要です。通帳の写しを添付することが一般的です。
  • 預貯金口座のすべてが対象となります。履歴が古いと意味がないためコピーをとる前に記帳をしておきます。直近2年以内の取引履歴を含む通帳のすべてのページをコピーします(表紙を含む。)。通帳を新しいものに交換している場合には古い通帳も必要です。
  • 通帳を処分してしまったり取引履歴が省略されてしまったりしているときは銀行などに依頼して証明書の発行を依頼することになります。
  • 通帳が元々ないオンラインバンキングについてはWEBサイトから履歴を印刷できます。もっとも履歴が一部しか取り出せないこともあり、その場合には別途発行手続きをとらなければなりません。
    ※裁判所によっては履歴として必要な期間が異なることがあります。
▼ 詳しい解説
書類
116不動産登記事項証明書(登記簿謄本)を用意したか?

現在の居住関係や資産の状況を把握するために添付が必要です。

  • 持ち家に住んでいる場合にはその不動産に関する登記事項証明書が必要となります。居住状況の把握に利用することから親族名義の不動産であっても添付します。
  • 現在居住しているか否かに関わらず自分が所有する不動産についてはすべて必要です。配偶者名義のものや親族名義のものであっても不動産の取得費用を負担したものについて登記事項証明書の添付が必要となることがあります。
  • 過去2年間に処分した不動産についても添付が必要です。その場合売買契約書の写しも必要となります。
  • 相続登記が未了のものであっても必要です。
  • 法務局で発行してもらうことができます。
  • 「一部事項証明書」ではなく「全部事項証明書」でなければなりません。
▼ 詳しい解説
書類
117賃貸借契約書の写しは用意したか?

建物や土地を借りているときには賃貸借契約書の写しが必要です。

  • 住居が持ち家ではなく賃貸であるときは賃借を証明するために賃貸借契約書を添付します。駐車場を借りている場合にも添付します。契約書がない場合は契約内容を示した上申書等の添付が必要となることがあります。
  • 契約書のコピーは特に理由がない限りすべてのページについて添付します。
  • 他人の賃借物件に住まわせてもらっている場合には賃借人に居住証明書を作成してもらいこれを添付します。
▼ 詳しい解説
書類
118車検証の写しは用意したか?

自動車やオートバイを所有している場合にはそれを証明する書面が必要です。

  • 原付きなどの車検証が存在しないものについては軽自動車届出済証や自賠責保険証書のコピーを提出します。
  • 車検証の記載事項がわかるため登録事項等証明書でも可能です。
▼ 詳しい解説
書類
119不動産査定書(鑑定書)、自動車査定書は用意したか?

不動産や自動車のような高価な財産については客観的な価値を評価する書面が必要です。

  • 不動産については固定資産評価証明書の添付が求められることがあります。これは市役所の固定資産税の担当窓口で発行してもらえます(東京都は都税事務所です。郵便の場合「都税証明郵送受付センター」に請求します。)。
  • 固定資産評価証明書では市価より著しく低い価格となっていることが多いことから、実際の評価額を算定するために不動産業者による査定書や不動産鑑定士による鑑定書の添付が要求されます。住宅ローンがある場合には残額が分かる資料の提出も必要です。
  • 自動車やオートバイを所有している場合にも査定書(中古車店の見積書等)が必要です
    (初年度登録からの年数によっては不要とされることがあります。)。
▼ 詳しい解説
書類
120戸籍謄本を用意したか?

戸籍謄本は必ず必要というわけではありませんが個別の事情によって必要となります。

  • 戸籍謄本は常に必要とされるわけではありません。
  • 原則添付不要であっても氏名に変更があるような場合や相続が発生したような場合には添付が必要となります。
▼ 詳しい解説
書類
121保険証書のコピーを用意したか?

生命保険や医療保険などの任意保険に加入している場合にはその保険証書の写しを添付しなければなりません。

  • 申立人自身の保険証書のコピーが必要です。裁判所によっては家族全員のものについての提出が必要なこともあります。
  • 解約返戻金が存在するときは解約返戻金予定額証明書も添付します。証書に返戻金がないことが示されていれば不要です。
  • 保険が失効していたとしてもそれが2年以内のものであるときは失効を証明する書面も添付します。
▼ 詳しい解説
書類
122無資産証明書は用意したか?

不動産を所有していないときは不動産を所有していないことを証明するために添付が要求されることがあります。

  • 無資産証明書とは市区町村で発行される不動産を所有していない旨の証明書です。
  • 土地や建物などの不動産は重要な財産であるため確実に換価処分する必要があるため添付書面とする裁判所が多くあります。
  • 無資産証明書の添付が必要な場合に過去1年以内に転居しているときは前住所における証明書の添付も必要です。配偶者など家族についても必要とされることがあります。
▼ 詳しい解説
書類
123その他個別の事情により必要となる添付書類を用意したか?

申立書や資産目録などに記載した内容の正しさを証明するためさまざまな書面が求められます。

  • 病気などによって働くことができないときは診断書やお薬手帳を提出します。
  • 株式や社債などの有価証券やゴルフ会員権などを所有しているときは証券や会員証をコピーしたものを提出します。
  • 光熱費などの公共料金の支払を証明するために領収書のコピーを提出します。口座から引き落としているときは通帳のコピーを提出しているので不要です。
  • 生活保護や年金、児童手当など公的扶助を受けているときは受給証明書が必要です。
  • 訴えられている場合には訴状や判決書などを添付します。差押えを受けているのであれば決定書も添付します。
  • 勤務先などで積立てをしているときにはその証明書も添付します。
    ※添付書面は個別の事情や裁判所の運用によって変わるため他にも必要となることがあります。
▼ 詳しい解説
費用
124手続きにかかる費用を把握しているか?

申立手数料、郵送料、破産予納金などが必要です。

  • 申立手数料は1,500円であり収入印紙で納付します。
  • 郵便切手を債権者の人数分用意しますが必要な枚数については事前に問い合わせる必要があります。同時廃止や少額管財であれば通常は数千円以内で収まります。
  • 同時廃止の場合と管財事件の場合とで費用が異なります。個人の破産の場合には同時廃止か少額管財となることが大半です。
  • 予納金は裁判所によって多少異なりますが、1~1万5,000円(同時廃止)、管財人がいるケースであれば20万円~が目安です。
  • このほかに住民票の写しなどの取得に費用がかかります。
▼ 詳しい解説
費用
125予納金の分割納付が認められることがあることを知っているか?

分割納付のできる裁判所があります。

  • 予納金は少額管財でも20万円程度かかることから負担が大きいといえます。そこで数回程度の分割払いを認める裁判所もあります。
  • 取り扱いは裁判所ごとに違います。本庁はできて支部ではできないこともあります。詳しくは弁護士に相談してください。
  • 分割が認められない場合には弁護士の指示に従い任意に費用を積み立ててから手続きを行うなどの対応をとります。
▼ 詳しい解説

申し立て手続

裁判所によって取り扱いが異なることがあります。
また、管轄というものがあるので好きなところで手続きがとれるとは限りません。

裁判所
126手続きをとるべき裁判所はどこか理解しているか?

自分の好きな裁判所を選んで手続きをとれるわけではありません。法律で定められた場所で申請しなければなりません。

  • 原則として、個人の場合にはその住所を管轄しているところで手続きをとります。事業者であれば主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄です。
  • 例外的に、連帯債務を互いに負っている者や主たる債務者と保証人、夫婦の関係にあるときは一人に管轄があればそれ以外の人に本来管轄がないときでも当該裁判所で手続きをすることができます。
  • 基準となる住所は住民票記載の場所が基本ですが実際の生活の本拠が異なる場所にあるなど住所以外の場所に管轄を認めてもらえることもあります。
    ※この他にも個別の事情によって管轄が生じることがあります。
▼ 詳しい解説
裁判所
127裁判所によって手続きや添付書類が異なることを理解しているか?

全国すべての裁判所が同じ手続きをしているわけではありません。重要な部分は共通していますが細部の運用については異なることがあります。

  • 免責不許可事由など法律で規定されているような重要な部分については共通ですが、特に規定がない部分については各裁判所の裁量により異なる運用がなされています。同じ裁判所でも本庁と支部で違いがあることもあります。
  • 手続き面でいえば、同時廃止と管財事件の振り分け基準、即日面接制度の有無、自由財産の範囲などに違いが見られます。
  • 提出する書類についていえば申立書自体が裁判所によって書式がかなり違います。添付書類についても添付の要否が異なったり共通して必要なものであっても必要な期間が異なったりするなど違いがあります。失敗しないためには早めに弁護士に依頼するようにしてください。
▼ 詳しい解説

4.手続開始後にチェックする

事後チェック

やるべきことが本当に終わったのか確認しなければなりません。

強制執行
128強制執行が中止されているか?

財産に差押えがなされている場合にはこれを中止してもらうため上申書を作成します。

  • 破産が開始されると強制執行をすることができなくなり、すでに差し押さえられている場合には中止されます。しかし強制執行をしている裁判所が債務者の破産を当然に把握できるものではありませんから破産の事実を伝えるために上申書の提出が必要です。
  • 管財事件の場合には管財人が弁護士に依頼している場合には弁護士がやってくれますが、同時廃止事件で本人申立ての場合には自分で手続きをとらなければなりません。
▼ 詳しい解説
不許可
129免責不許可となったか?

万が一免責が認められなかったとしても次善の策を講じることが大切です。

  • 弁護士が代理している場合には免責が不許可となることはほとんどありませんが、依頼せずに本人が直接申し立てたような場合には起こり得ることです。
  • まず考えられる対処法としては異議を申し立てることが考えられます(即時抗告)。不許可決定を受けた日から1週間以内でなければできない為速やかに行わなければなりません。不服の内容を記した文書を提出して行います。
  • 即時抗告も認められなかった場合には民事再生など他の債務整理手段を検討します。
▼ 詳しい解説

チェックリストをご利用いただく場合の注意事項

  • 各裁判所によって手続き、添付書類、費用などが異なることがあります。また、個別の案件によって手続き、必要書類、費用などが異なることもあります。
  • 本チェックリストは細心の注意をはらい、専門家の監修のもとで作成されていますが、内容の正確性を完全に保証するものではありません。必ずご自身の責任でお使いください。適切な手続きの選択を含め、手続を確実に行うためにはできるだけ早い段階で専門の弁護士に相談してください。
  • 本ページにおいては、各チェック項目にて詳細な解説を行っています。そのため、チェック項目のみを記載したシート(PDF)を直接リンクすることはご遠慮ください。
  • このチェックリストは、非営利かつ個人として利用されることを想定して作成されています。商用利用および不特定多数の方が利用できる環境への無断転載等は固くお断りいたします。
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