破産宣告のメリット・デメリット、条件などを徹底解説!
2022/01/25 02:09
目次
破産宣告、もしくは自己破産、という言葉を聞いたことはありますか?
たとえば、借金がなかなか返せず「破産」という選択肢が見えてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「破産」と聞くと、何だか人生が終わってしまうような怖いイメージもありますが、借金を減らすために法律でしっかりと認められた制度です。
しかし、あまり破産についてよく分からないままであると不安が大きいと思います。
そこで今回の記事では、破産とはどのような制度なのか、メリット・デメリットはどういったものがあるかについて解説していきます。
破産について
破産宣告とは?
破産宣告は、現在は「破産手続き開始決定」と呼ばれます。裁判所に申し出て、借金を返せる見込みが無い、と認められた場合に、自分の残りの財産を借入先に分配することで、借金の返済義務が消滅させる制度のことを言います。
財産(たとえば、不動産、自動車など)が基本的に全て借入先へと分配されてしまう、という手続きになってしまうため、一般的に借金に困った人の最後の手段として位置づけられています。
破産宣告を受ける条件
上記のように破産手続は、借金の返済義務が最終的にはなくなるという重大なものであるため、簡単には行われません。いくつか条件が決められています。
条件① 借金の支払いが不可能であること。
ただ借金の額が多いというだけではなく、現在の生活状況などを踏まえて「これは返済をするのが厳しいであろう」と裁判所から認められる必要があります。
なぜ借金をするに至ったのか、現在の収入はどのくらいか等などを報告し、精査してもらうこととなります。
条件② 借金が「非免責債権」でないこと
破産手続によって裁判所に認められれば、原則として全ての借金が免除されると説明しましたが、残念ながら免責がされない「非免責債権」という借金も一部存在します。
主なものでは以下が挙げられます。
・税金
・公共料金(電気ガス等)
・社会保険料
・慰謝料
これらの借金は破産手続を行っても無くならないため、そのまま支払いを継続する必要があります。
条件③「免責不許可事由」に該当しないこと
免責不許可事由というものが法律で定められており、これらに該当すると、借金が免除されない可能性があります。
免責不許可事由には以下のものが挙げられています。
・意図的に財産を隠す
・一部の借入先にだけ借金を返済する
・裁判所に対してウソの供述をする
・ギャンブルなどの浪費をする
詳しくは破産法252条に書かれています
もっとも、これらに該当したからといって絶対に破産が出来ない、というわけではありません。例えば、ギャンブルによる浪費といっても、その程度・頻度を考慮して判断されることがあります。
また、以下の条件に当てはまる場合は破産ができないことがあるため、注意が必要です。
条件① 職業制限に引っかかってしまう。
破産手続を進めると、職業によっては一定期間当該仕事に従事することができなくなってしまいます。そのため、現在その仕事に就いている人は転職などを考える必要がありますし、その仕事を辞められないのであれば、自己破産以外の手続きを考慮するなどの対応をする必要があります。
制限を受ける職業・資格は主に以下のようなものがあります。
・警備員
・質屋、古物商
・宅地建物取引主任者
・弁護士、会計士、税理士等
・保険外交員
以上挙げたものはあくまで一例であるため、詳しく知りたい場合は、こちらを参照ください。
条件② 自己破産の免責を過去7年以内に受けている場合
過去7年以内に既に破産手続きによる免責を受けている場合は、再び自己破産を行うことはできません。
借金をほとんど全て免責できてしまう破産手続きが何度も手軽に利用されてしまうことを防ぐためです。
破産手続きの流れ
破産手続きには大きく分けて「同時廃止事件」と「管財事件」があります。それぞれについて手続きの流れを見ていきましょう。
管財事件の場合
破産手続において大事なのは、借金をしている人の財産を公平に分配することです。その分配をスムーズに行うために、財産を管理する人として外部の法律家である「破産管財人」が選ばれます。
このように管財人がつくこととなるケースを「管財事件」と呼びます。
①必要書類の提出
まずは、破産者がどのような原因で破産に至ったのか、どのくらい財産を現在所持しているかを確認するために、裁判所へと書類を提出する必要があります。
例えば、収入を確認するための源泉徴収票や、預金残高を確認するための通帳などといったものを、提出していくこととなります。
②破産手続き開始の決定
出された書類を精査した裁判所が破産宣告、すなわち破産手続き開始の決定を下します。
③管財人の選定・面接
そして、先ほども紹介した「破産管財人」が裁判所から選任されます。基本的には弁護士がなることが多いです。
破産者はこの管財人と面接をして、どのような事情で破産に至ったか等を話す必要があります。
④債権者集会
借金の借入先や管財人などの関係者が集まる会が裁判所のもとで開催されます。ここで、分配についての取り決めなどが行われます。
⑤免責許可
そして最後に、裁判所から「免責許可」が出されます。この許可が出ることで、ようやく借金の返済義務がなくなるというわけです。
同時廃止事件の場合
同時廃止とは、預貯金や車、不動産といった目ぼしい財産がない場合に取られる手続きのことを指します。
財産がない場合は、それらを借入先に分配するという処分が行えないため、この手続きがカットされ、管財人も選出されないため、早くに手続きが終了するという特徴があります。
①必要書類の提出
管財事件の場合と同様に、裁判所が精査するために必要となります。
②破産手続き開始
こちらも管財事件と同様です。ただ違うのは、この時点で「同時廃止の決定」がなされます。この決定がなされることにより、管財人選任等の手続きが省略されることとなります。
手続き開始と「同時に」決定するため「同時廃止」と呼ばれます。
③免責許可の決定
こちらも管財事件と同様です。
管財事件と同時廃止事件の違いについては、こちらの記事「管財事件と同時廃止の違いとは?」も参照ください。
破産手続きにかかる費用
破産手続きに入るにあたって、裁判所に予納金という費用を支払う必要があります。
この費用は同時廃止事件・管財事件かによって異なります。
なぜなら、管財事件においては外部の専門家である管財人に対して、対価を支払う必要があるからです。
大体の相場として、同時廃止ではおよそ20~30万円ほど、管財事件では50~90万円ほどと言われています。
破産宣告のメリット・デメリット
ここで改めて破産をするうえでのメリット・デメリットを整理してみます。
破産宣告のメリット
①借金の支払い義務が免除される
こちらが最大のメリットとなります。ただし、上記で説明した通り、税金等の一部の借金は免除されないので、注意が必要です。
②生活する上で必要な財産は残してもらえる
破産手続きにより、全ての財産が分配されてしまうわけではなく、ある程度の財産は破産者の手元に残しておくことが出来ます。
これは破産手続き自体が、借入先のための制度であると同時に、破産者の経済的立ち直りを目的したものであることに由来します。
99万円以下の現金や、20万円以下の物については処分を免れますし、また日常生活や仕事に必要なものも同様に処分を免れることがあります。
残せる財産について、詳しくは「自己破産しても財産を残せるの?」も参照ください。
破産宣告のデメリット
①価値のある高額な財産は没収される
まず、住宅等の不動産や、自動車といった資産は没収されることは殆ど間違いないでしょう。
②国が発行する機関紙「官報」に掲載される
「官報」というものを聞いたことはありますか?国が発行している新聞のようなものです。
破産をした場合、こちらに指名および住所が記載されてしまいます。
もっとも、官報を購読している人はあまりいないため、「官報に載ってしまったから、破産したことが知り合い等にバレてしまう」という心配は殆ど無いと言ってよいでしょう。
③10年はローンが組めない
「ブラックリスト」という言葉を聞いたことはありませんか?「債務整理をしたらブラックリストに載ってしまう」といったようなことをネットで見かけたことをある人も多いではないのでしょうか。
厳密には「ブラックリスト」という名前のリストがあるわけではありません。
金融機関の間で共有されている信用情報を管理している信用情報機関に「この人は(破産ないし民事再生等)をしました」という「事故情報」が登録されてしまうことを「ブラックリスト入り」と俗に表現しているのです。
この事故情報は5~10年間は登録され続きます。その間はローンを組むのが難しくなります。なぜなら、ローンを組もうとする際に、借入先の金融機関は信用情報機関に照会して、事故情報があるかどうかをチェックしてしまうことが多いためです。
一定期間が過ぎると、事故情報の登録は解除されるため、その後であれば問題なくローンを組むことは出来るでしょう。
自己破産した際のローンの組み方については、こちらの記事「自己破産後に住宅ローンは可能?自己破産のデメリットなど徹底解説!」も参照ください。
④特定の職業に就けなくなる
先程も説明した通り、破産をした場合、「資格制限」が科されます。制限がかかる職業についている方は、破産手続き期間はその仕事をやめる必要があります。
その他破産のデメリットについて詳しくは、こちらの記事「自己破産のデメリットとは?」を参照ください。
まとめ
今回の記事では、破産手続きの流れや、破産宣告のメリット・デメリットについて解説いたしました。
借金の返済義務を無くすことが出来る、という意味で大変魅力的な制度ではありますが、無論、様々なデメリットもあるため、手続きを考える場合は、それらを理解したうえで臨む必要があります。
破産を検討している場合は、やはり弁護士等の専門家に相談することを強くお勧めいたします。
なぜなら、上記説明した通り、破産手続きは面倒な手順を踏む必要があるうえに費用もかかります。
デメリットもあるため、必ずしも破産がベストな選択肢とは限りません。その判断が適切なものかどうかを判断するために、法律の専門家である弁護士等に頼るのが一番良いのです。
借金が多く、破産も視野に入っている、という方はなるべく早めに弁護士等に相談してみましょう。
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本記事の監修弁護士 前田 祥夢(東京弁護士会所属)